1985年8月12日18時56分に羽田発伊丹行きの日本航空123便(ボーイング747型機)が消息を絶ち、群馬県の山中で墜落事故を起こしました。この事故により乗員乗客524名中520名が死亡し、単独の航空機事故としては世界最大の犠牲者数を出した惨事となってしまいました。航空事故調査委員会により事故原因についての究明が行われてきましたが、今でもいくつかの点で疑問が残されています。日本の航空史上で最悪の航空機事故となった日航機墜落事故に至った原因として考えられている内容についてをご紹介します。
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◼︎日航機墜落事故の経緯とは
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事故機から回収されたボスレコーダやフライトレコーダ・管制官との会話によると羽田空港を離陸して12分後の18時24分に相模湾上空を飛行している時に爆発音が発生して機内の気圧が下がり、客室内で自動的に酸素マスクが落下しました。爆発音の直後に飛行機をコントロールするための油圧系統が全てダウンしてしまったため、機体の制御ができなくなってしまいました。この時点で飛行機を制御する方法はエンジンの推力を調整するのと電動式のフラップ・車輪を出すことだけになってしまいます。パイロットは制御ができなくなった機体をエンジンの推力を調整したりフラップを操作するなどしてコントロールしながら高度を下げて羽田に戻ろうとしましたが、姿勢を制御することができなくなった機体は山梨県や群馬県の山中を迷走して群馬県にある御巣鷹山の尾根に墜落・炎上しました。パイロットは爆発音の発生と機体がコントロールできなくなったことを地上の管制官に報告しています。これらのことから日航機墜落事故の直接的な原因は何らかの原因で機内で爆発が生じた影響で飛行機のコントロールシステムが破壊されてしまい、操縦不能に至ったと考えられています。飛行機をコントロールするための尾翼や主翼のエルロンは油圧によって動作する仕組みになっているので、事故後に油圧システムが破壊されてしまった原因についての究明が行われることになりました。
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◼︎日航機墜落事故の事故原因について考えられている原因と問題点
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日航機墜落事故の現場から回収された墜落事故機の残骸から事故原因に結び付いたと考えられる重要な情報が得られました。ジェット機は気圧が低い高度を飛行するため機内で人が生存するために気体の圧力を地上と同じ状態に保たなければならないのですが、機体の後部には大きな圧力がかかるので圧力隔壁と呼ばれる頑丈な部材によって支えられています。この圧力隔壁が破壊されると機体で空気の圧力を保つことができなくなってしまいます。事故機の残骸から回収された圧力隔壁には金属疲労による破壊の痕跡が認められ、機内で発生した爆発音は圧力隔壁が破損した際に機内の空気が急激に機体の後部に流れたことが分かりました。機内の高圧の空気が内部から垂直尾翼を破壊して尾翼の一部を吹き飛ばしてしまい、機体を制御するための油圧系統を破壊したことが報告されています。圧力隔壁が破壊された原因は1978年に起こった「しりもち事故」の際の修理ミスであることが判明しています。一般的に飛行機には1箇所が故障しても他の部分が補完することで重大な事故に至らないような構造(フェールセーフ)が採用されているので、本来であれば圧力隔壁だけが故障しても墜落に至らないような構造になっているはずです。ところが今回の事故ではフェールセーフが正しく機能せずに、圧力隔壁の故障が引き金になって油圧系統が破壊されて墜落に至ってしまいました。このため日航機墜落事故ではフェールセーフが十分に機能しなかった機体の構造に根本的な問題があったと考える専門家もいます。
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◼︎まとめ
日航機墜落事故後にボーイング社は後部の圧力隔壁が故障したとしても尾翼や飛行機をコントロールするための油圧系統が破壊されないようにするために同型機の補修を実施しています。ところが事故調査委員会の報告書では事故の直接的な原因として圧力隔壁の修理ミスであることが明らかにされていますが、フェールセーフが正しく機能しなかった機体の構造上の欠陥については明らかにされていません。このため今でも事故調査委員会が公表した報告書の内容が不十分であると指摘する専門家がいます。