クレーマー
一度は耳にしたことがあると思います「クレーマー」という言葉。理不尽に店員や店にクレームを寄こす困った客のことを指します。ただ、たとえ店員や店側にミスがなくても「申し訳ございません」と、とりあえず謝罪をしなけらばならないのが、暗黙のルールのようになっています。
しかし、イギリス人の夫と結婚した、大阪出身の日本人wiltomoさんのクレーマーエピソードは少し違ったのです。wiltomoさんは現在、イギリスに移り住み、アパレル店の店員として働いています。そのアパレル店に訪れた「問題のある家族」について、wiltomoさんがエピソードをブログに投稿しました。その時の店長の対応に、称賛の声が多数寄せられたそうです。point 233 | 1
店の物を勝手に操作
ある日のこと、wiltomoさんはレジ横に立つ客の行動に目を止めました。wiltomoさんの職場は、スタッフが在庫管理などをするためのiPadを導入しています。いつもレジ横に置いているのですが、その日はなんと、娘を抱えた母親がそのiPadを勝手に操作し、ネットにアクセスをしてアニメ動画を再生して観ていたのです。
iPadが壊されたり盗まれたりする可能性もあるため、職場の決まりで、客が操作しているのを発見したら触れないよう店員が注意をすることになっていました。そこで、「すみませんが、iPadはスタッフ用となりますので、触れないようにお願いします」とwiltomoさんは母親に注意をしたそうです。
すると、母親から話を聞いた父親が、wiltomoさんに「おまえ!」と噛み付いてきたのです。更に、「触るなと注意する前に、俺ら客に対して「探しているものは何ですか?」と聞くのが先だろ!!俺の妻はさっきから店員が話しかけて来んの待ってたんだ!」と、立て続けに英語でまくしたてられたそうです。
しかし、wiltomoさんが見たところ、母親は娘にアニメを見せて時間を潰していただけで、商品を探していた様子はありませんでした。また、wiltomoさんが勤めているアパレル店は、店員から尋ねる接客をしていないとのことです。日本では百貨店以外でも行っている接客であり、決して珍しくありませんが、国が違えば接客の基準も異なるのでしょう。point 220 | 1
wiltomoさんは客の横柄な態度を不服に思いながらも、手の空いていたバイトの女性に「この家族を手伝うように」と指示し、自身は、混んできたレジの対応に追われました。問題の家族は、やはり探している商品などありませんでした。そのまま帰ってくれればよかったのですが、バイトの女性の報告によると、問題の家族は「本社にクレームを付ける」といい残して退店したとのことでした。そして、この騒動の2時間後、ロンドンにある本社宛てに、本当に父親からクレームが寄せられてしまったのです。point 233 | 1
店長の対応が凄い!
本社に入っていたクレームは、事実とは異なるものでした。その内容とはwiltomoさんが母親に怒鳴り、その剣幕に驚いた娘が泣いたというものでした。「客の親子2人を傷付けた」という事実無根の汚名を着せられてしまったのです。
クレームに対応した担当者は問題の本質をとらえ「不快に思われたことにはお詫びしますが、iPadをお客様が触っている場合は、必ず店員は注意する決まりになっています」と説明をしてくれました。しかし、父親は更にメールを送ってきました。「ろくに英語もしゃべれない外人スタッフが娘を怖がらせ恐怖に陥れた。今後この店に行く事がトラウマになるかもしれない。外国人労働者を雇用するなら、今後はそういう事も考えて採用すべき。ただでさえ子供にすればアジア人は異質に見える」とメールで訴えてきたのです。ロンドン本社のスタッフが「父親がこう言って来ています」とメールで店長宛てに送って来ました。point 284 | 1
このクレームを知ったwiltomoさんは、父親から「異質に見える」といわれたことに少し納得してしまいました。なぜなら、異国の地で自身がどれだけ奇異な目で見られるのかを体感し、またイギリス人の夫が日本でどのように見られるのかをよく知っていたからでした。
しかし、店長は違いました。本社からメールを受け取った店長は、「大人がこれをいうべきではない。例えこの男性がアジア人の見た目を異質だと腹の中で思っていても、わざわざ書いて寄こす必要はない」と怒りを露わにしました。
更に翌日、店長宛に父親から電話が来た時、電話を受けた店長は、父親の差別的な指摘には耳を貸しませんでした。代わりに、店長は英語で毅然とこう述べたのです。「では聞くが、あなたは人の会社のパソコンを勝手に立ち上げ、YouTubeを見てよいと思うのか?車を買いに行き、そこの社員用のパソコンを起動してアニメを見る人を見たことがあるのか?」と。
問題の本質は、あくまでも「母親が勝手に店のiPadを操作したこと」です。店員が外国人かどうかは、問題ではありません。店長は客をなだめるために不必要に謝るようなことはせず、店員を守ったのです。
惜しい人材
「店長がめっちゃカッコいい!」「どこの国にも、訳の分からないクレームをつけてくる人がいるんですね。」「攻撃してくる人もいれば、守ってくれる人もいる…同じ人種でもさまざまな人がいます。」「店長の頼もしさに胸が熱くなりました。こんな人と一緒に働けるのは幸せなことでしょう。」と、wiltomoさんの投稿には店長の言動を称賛する声が多数寄せられました。
更に「何も心配しなくていい。こんなことで心が折れたらダメだよ。折れないとは思うけど」と、冗談交じりにwiltomoさんを励ましてくれた店長。この店長、実は定年間近だそうです。店長のような心の温かい人が、もうすぐ店を離れてしまうことは残念でなりません。店長と同じような対応ができる人は、決して多くはないはずだからです。
wiltomoさんは、店長の人柄をいつまでも心に留めておくことでしょうし、人としても、店員としても、上司としても、こんな素晴らしい人と一緒に働けて幸せですよね。