「日曜劇場 テセウスの船」(TBS系、毎週日曜午後9時)は 竹内涼真さん演じる主人公・田村心が、タイムスリップした過去で無差別殺人事件の謎を追う姿を描く連続ドラマです。
かつて心の最愛の妻だった由紀を演じるのは上野樹里さん。物語の序盤で命を落とすも、心が歴史を変えたせいで、心とは結婚せず週刊誌の記者として第4話で再登場。心に代わって事件の被害者に懸命に情報提供を訴える5分間のシーンは視聴者の感動を呼びました。
プロデューサーの渡辺良介さんは 上野さん起用の理由や魅力を語りました。point 211 | 1
わずか5分足らずのシーンながら鬼気迫る演技
原作はマンガ誌「モーニング」(講談社)で連載された東元俊哉さんの同名マンガ。主人公の田村心(竹内さん)が31年前にタイムスリップし、父で警察官の佐野文吾(鈴木亮平さん)が逮捕された「音臼小無差別殺人事件」の謎を追う。31年前の平成元年で事件を止めるために奮闘した心だったが、第4話で、31年前の世界から現代に帰還。ところが、文吾は変わらず犯人として死刑判決を受けており、かつては生きていた母の和子(榮倉奈々さん)と兄の慎吾(番家天嵩くん)も心中と歴史はさらに悪い状況に。point 262 | 1
そんな中で登場したのが、歴史が変わったせいで生きている由紀でした。しかし、心と結婚しなかった“岸田”由紀は「音臼小無差別殺人事件」について調べる週刊誌の記者となっていたのでした。文吾の冤罪(えんざい)を晴らそうとする心は、由紀から「音臼小事件被害者の集い」を入手し、証言者を求めて会場に向かうが、顔と名前を変え被害者・木村みきお(安藤政信さん)の妻となっていた姉の鈴(貫地谷しほりさん)の幸せを考えて諦めてしまいます。point 265 | 1
すると由紀が会場に乗り込み、被害者たちの前で、「真犯人がいるのではないでしょうか」と熱く語り、無実を証言してくれる人を探そうとするが、被害者たちからは罵声が飛び、揚げ句の果てに水をかけられてしまう。しかしそれでも由紀はひたすら情報提供を呼びかける…という展開で、わずか5分足らずのシーンながら上野さんの鬼気迫る演技が光りました。視聴者からも「由紀さんの行動に涙が止まらない」「リピート再生して泣いている」「由紀さんはいい人のままで良かった」といった声が上がっていました。point 291 | 1
“他人”だが近くにいる関係性をもっと膨らませてみたい
ところが実はこのシーン、原作にはないという。
「原作にも由紀が記者として出てくるという設定がある。とても近くて遠い存在の心と由紀の関係をもっと描いてみたくなったんです」と渡辺さん。
両親らと同様に、心にとって、妻の由紀も“家族”だったが、歴史を変えたせいで“他人”となったのです。“他人”だが近くにいるという関係性をもっと膨らませてみたいという意図があったという。
「原作もそうでしたが、週刊誌の記者というバリバリキャリアウーマンの由紀が、心とどう近づいていくのかというところが見どころになれば」と狙いを明かします。point 222 | 1
「見入っちゃいましたね。アウェーな環境の中飛び込んでいって壇上でしゃべる緊迫感とか、ドキドキした感じが、お芝居ですけれどすごい臨場感を持って演じていただけた」とにっこり。渡辺さんは あの5分間の感動と緊迫のシーンについて、水をかけられるシーンも一発OKだったという。
どうして上野さんを起用したのか?
「まず1話の由紀って2シーンしかなくて、冒頭10分ぐらいですぐ死んじゃう。まず、10分でこの女優さんが死んじゃうのという驚きを作りたかった。上野さんが死んだら視聴者の皆さんもびっくりするだろうなと」と意図を明かします。その上で、「すごく大事なキーパーソンなので、役に対する姿勢、演技力含めて出ていただけたらありがたいなと思っていました」と話します。
現場での上野さんはといえば、「安定感抜群ですよね。カメラが回ってスイッチが入ると圧倒的な存在感がある」とコメント。
「皆さんそうですけれど、本当に真面目というか、演じることに対してとにかくひたむきなんで、絶えず上野さんからも『こうしたらどうか』『ああしたらどうか』という提案がいっぱいくるんです」と語ります。
「役を引き寄せる力なのかなあ?」と上野さんの魅力を語る渡辺さん。「由紀っていう台本にあるキャラクターを 彼女なりに解釈してアレンジして『あっ、そういう由紀ありだよね』って我々に思わせてくれる。想像の範囲を広げて、良い意味で裏切ってくれる良さがあるし、もちろん可愛らしい人なのでそういう魅力も随所に出ている」と語ります。
「上野さんとは今回初めてご一緒するんですけど、割と現代ブロックの由紀は、素に近いんじゃないかと思っています。あっけらかんとしていたりとか、サバサバしているけどやさしかったり、情にもろいとか、現場で見る限り上野さんらしいなと見ています」と明かしました。point 339 | 1
最後に、上野さんをはじめとした実力派の名演技と合わせて、SNS上では真犯人の考察も盛り上がっているようですが…。
そこでイベントに寄せた原作者の東元さんの手紙にあった「原作と犯人が違うと聞いている」というメッセージについて、渡辺さんに確認してみると「間違いない」と改めて断言。いよいよ犯人捜しも盛り上がりそうですね。