外国人観光客向けの免税店などは客から消費税を受け取らない代わりに、商品の仕入れ時に支払った消費税分の還付を受けることができますが、この制度を悪用し 偽造申告で消費税の還付を受けようとする事例が後を絶たないそうです。
埼玉県川口市の免税店業者「花沢商事」は、2018年3月までの約半年間に数百人の中国人観光客に約8億円分の加熱式たばこ「アイコス」を免税販売したとして、消費税約6千万円の還付を請求しました。しかし関東信越国税局の税務調査で、この店の商品を持って出国した客の記録がないことが判明。
免税店は免税品の購入者のパスポート番号などを記録し保管する義務があるが、税務調査では、同社がSNSで短期滞在の中国人らを募集し、謝礼と引き換えにパスポート番号などの提供を受けて購入記録を偽造していたことがわかりました。
同国税局は免税要件を満たしていないとして還付をせず、重加算税など約2千万円を追徴したとみられます。
社長は「取材には応じられない」とコメントしましたが、日本の加熱式たばこは中国で高値で取引されるため 同社は「アイコス」を別の品目に仮装し、転売目的で 中国に郵送していたとみられます。
また、大阪・ミナミを中心にドラッグストア9店をチェーン展開する「フォレストドラッグ」の運営会社2社は、免税が適用されない販売分を免税販売だったように仮装。不正に消費税の還付を受けたとして、大阪国税局から昨年4月までの2年間で約3千万円を追徴されました。
同じ店で客1人に免税販売できる化粧品などの消耗品は1日50万円までだが、上限を超えて販売した際に レシートを分割発行するなどしていました。そのほか 計約1億6千万円の所得隠しも指摘され、法人税も含めると追徴税額は 計4千万円に上ったということです。
化粧品や医薬品を主う2社は、訪日客の「爆買い」を背景に売り上げを急増させていました。取材に対し、レシートの分割などについては「そんなことはしていない」としつつ、「ミスはあったが、修正申告と納税は済ませた」とコメントしました。
このように 大阪と埼玉の免税店業者計3社が重加算税を含め計約5千万円以上の追徴課税を受けたことが判明。税率が10%にアップし、不正な還付請求により得られる「うまみ」も増しており、国税庁は警戒を強めています。
国税庁は昨年、消費税調査の司令塔として、消費税担当の統括国税実査官を東京と大阪の両国税局に新たに1人ずつ配置。未遂のケースを含め脱税容疑での刑事告発も積極的に進める方針だそうです。
ある国税幹部は「消費税の不正還付は国庫金をだましとるようなもので、納めるべき税金を逃れる脱税より悪質だ」と話します。point 205 | 1
国税庁によると、2018事務年度(18年7月~19年6月)の不正還付は829件で、2年ぶりに800件を超えた。過去3事務年度の追徴税額は230億円超にのぼるそうです。
不正の主な手口の一つが、免税販売を装った還付申告なのです。東京国税局は昨年6月、高級腕時計を中国人観光客らに免税販売したように装って約1億円の還付を申告したとして、東京都港区の免税店の実質経営者(46)を刑事告発。旅行業者から買い取ったパスポートのコピーを使い、「客」の購入記録を偽造していたということです。point 296 | 1
外国人観光客の増加にともない、今年4月時点の全国の免税店は12年の10倍以上となる5万198店へと急増。こうした流れに対応するため、20年4月から免税販売手続きを電子化し、21年10月以降はすべての販売データが即時に国税庁に提供されるようになります。
現在、財源としての消費税の重要性は増しています。税率3%で導入された1989年度の税収は3・3兆円だが、09年度以降は法人税を上回り、今年度当初予算では19・4兆円に。最も多い所得税(19・9兆円)とほぼ並んだことになります。
それだけに今後の徹底したシステム電子化対応による 不正行為の防止に期待がされます。point 209 | 1