TBSドラマの躍進に貢献したドラマ「仁」は、タイムスリップものです。現代で脳外科医をしている主人公・南方仁が、1862年・文久2年の江戸時代にタイムスリップし、持ち前の医療で活躍していく物語です。原作は漫画で、ドラマでは間を置いて2期にわたって放映されました。
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タイムスリップを握る鍵は、胎児の形をした腫瘍が握っています。ある日仁の元へ運び込まれた重体の男の頭の中に存在したその腫瘍は、容器に入れて保管されていましたが、正体不明の重体の男がある薬と共に持ち出した際、仁と共に階段から転げ落ちてしまいます。そのタイミングで、仁はタイムスリップをしてしまいます。
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タイムスリップに関して、物語に関わってくる人物は大きく3人です。江戸時代で共に暮らすことになる武家の娘・橘咲と、仁が未来で植物状態にしてしまった婚約者にそっくりな花魁・野風、そして有名な坂本竜馬です。
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腫瘍が働くところでたびたび「戻るぜよ、あん世界へ」と声が聞こえながら、植物状態の婚約者を救うには、未来の医療が進歩させるために、過去の医療を進めれば良いのではないかと奮起します。仁は、野風の手術をおこなった後、坂本竜馬の暗殺を阻止しようと考えます。咲とは惹かれ合うようにもなっていました。伝わっている暗殺を阻止することはできたのですが、結局別の攻撃を受けてしまい、仁の奮闘もむなしく竜馬は返らぬ人となります。
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物語はそこで終わらず、咲が傷を受け、未来にしかない薬が必要となったところから、物語はタイムスリップへと近づきます。その薬は腫瘍を持っていた正体不明の男が持ち出そうとしていた薬でした。同時に過去へわたって来ていないかと探す仁は、同じ場所から未来へと返ってしまいます。正体不明の男として。
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タイムパラドックスはタイムスリップものには付き物の問題で、数多くの物語で独自の解釈がなされてきました。過去を変えると、良くも悪くも未来の形が変わってしまい、その未来に生まれるはずだった自分の存在も消えてしまうものであったり、未来の形は変わらず、過去でどのような行動を取ってもどこかで帳尻合わせがおこなわれ、本来の未来がそのままやってくるものなど、様々です。主人公である仁も、過去で医療を発展させることで未来の医療がそれだけ進み、婚約者の友永未来を救うことに繋がると考えていました。
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ドラマ仁でのタイムパラドックスの解釈は、仁が未来へ戻り、自らが過去で作り上げた医療の礎の上に、タイムスリップ前とは異なる世界を生きるというものでした。花魁・野風を救ったことにより、友永未来と同等の存在も、植物状態になることはなく、もちろん記憶こそ違えど、健康な姿を見せています。救おうとした咲も、助かったという証がその未来にまで伝わっています。江戸時代の人々の記憶からは仁の存在が消えてしまいましたが確かな痕跡が残り、橘咲が独身を貫いたなど、ところどころ複雑な気持ちにされながらも、全体的に見ればハッピーエンドというものでした。腫瘍の正体は判明せず、龍馬の声がしたのも、何らかの交信によるものだと考えられます。
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ちなみに原作では、婚約者のもおらず、仁も現代に未練が感じられないような描写がなされていたので、そのまま歴史上の人物として礎になるかと思われたのですが、ドラマ版と大筋は同じくし、仁は江戸時代と未来の両方に存在しながら、同一人物として繋がっていて、意識すると両方の風景を行き来できるという、よりスッキリした終わり方です。腫瘍の正体も、坂本竜馬が斬られた際に飛んだ脳髄が、目から移ったものであると描かれています。どちらの終わり方が良いのかは、見た人それぞれの好みになるでしょう。