腸は単に食べ物を消化するためだけの器官ではなく、わたしたちの生死に関わる多くの病気に関わっているといわれており、また、私たちが直面する健康問題の鍵を握る存在かもしれないという研究結果が出ています。米国の研究チームによると、免疫機能の異常である自己免疫疾患はもとより、精神疾患であるうつ病、代謝性疾患である単純肥満などでさえも、実は腸内に常在する細菌とわたしたちのからだの細胞との「クロストーク(相互対話)」の失敗に起因するというんです。
写真;www.akanedai-eysn.com
研究チームは、「わたしたちのからだの免疫の仕組みについて知っていることを聞いたら、ほとんど人は白血球、リンパ腺、あるいはワクチンのことを思い浮かべるでしょう」といい、続けて、「それらは免疫機能のほんの一部に過ぎないことを知ったら、みんな驚くに違いありません。わたしたちの腸内には、からだのほかの部分を合わせたよりも多くの免疫細胞が存在するのです。」と述べました。
写真:karapaia.com
ヒトの腸にはとてもたくさんの免疫機能があり、ほとんどの人は、食べた物を消化することだけが腸の機能だと思っているのであまり注意を払いませんが、実際には腸内にはからだのほかの部分を合わせた数の150倍以上の細菌が住んでおり、これらの腸内細菌は消化を助けるだけでなく、もっとはるかに重要な仕事を請け負っているのです。その重要な仕事が、「クロストーク」とよばれるものであると研究チームは語ります。また、「クロストーク」というのは、腸内細菌と腸やその他の内臓器官の細胞間で交わされる物質や情報の受け渡しのことであり、最近の新しい考え方によれば、この「クロストーク」が円滑に進行しなくなることが病気の原因を作り出すのだといいます。
写真:diet-kyoshujo.biz
さらに、健康な人の体内では、腸内細菌が、必要に応じて人の免疫系を刺激して、その解答を受け取るような相互対話が成立しています。現代的な生活様式、食事、過剰な抗生物質の使用といったことがこれらの細菌の減少をもたらし、その結果「クロストーク」も減っていったというわけなんですね。慢性的な体内の炎症反応は、今日先進諸国の主要な死因に数えられている、心臓病、がん、糖尿病など多くの生活習慣病に関連していることが知られていますが、これらの多くもはじめは腸内細菌の機能不全が原因で始まる可能性が高いという事実も明らかになっています。
写真:www.tcnkenko.com
健康的な腸内細菌の組成についての理解が深まることで、個人ごとの最適な腸内細菌をもたらすための個別化医療による腸内細菌バランスの回復も可能になるでしょう。そのための新しいプレバイオティクスやプロバイオティクスなどの開発にもつながるだろうと、研究チームは述べました。今後の研究にも期待したいですね。