スタジオジブリと言えば、宮崎駿監督を中心として、アニメ映画の分野で数多くの大ヒットを生み出したアニメスタジオとして世界的に有名です。そのスタジオジブリを語る時には、宮崎監督と両輪のような存在であるもう一人の名監督、高畑勲の存在を忘れることはできません。高畑監督はスタジオジブリが生まれるよりもずっと昔から、数多くの名作を世に送り出してきた、日本アニメ界を代表する巨匠の一人なのです。
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その高畑監督にとって現時点では最後の作品となっているのが、2013年に公開されたかぐや姫の物語です。高畑監督作品としては、何と14年ぶりの新作として大きな話題を呼んだこのかぐや姫の物語は、およそ8年という長い年月をかけ、50億円以上と言われる巨額の製作費をつぎ込んで制作されました。しかし、その興行成績は製作費を大きく下回るという、スタジオジブリの作品らしくない残念な結果となってしまいました。ただ作品としての評判が悪かったのかと言うと、決してそういうわけではありません。賛否両論はあったものの、高く評価する人も少なくはありませんでした。point 346 | 1
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このかぐや姫の物語の評判の中で、多くの人たちが良かったところとして挙げているのが、その独特の映像表現のすばらしさです。それまでにはなかった美しさを持ったアニメーション表現に対して、大きな感動を覚えたと言う人が大勢いたのです。高畑監督は元々、アニメでありながら実写映画を思わせるようなリアリティのある表現を得意としてきたのですが、前作のホーホケキョ となりの山田くんでは全く新しい表現にチャレンジしました。それは一般的なアニメではくっきりとした線によって描かれる登場人物や背景などを、まるで水彩画のようなタッチで描くというものです。point 335 | 1
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このかぐや姫の物語ではその表現技法をさらに進化させ、それまでにはなかったアニメを作り上げました。一つ一つのシーンがまるで一枚の日本画の連続のような美しさを持っている、芸術の領域に到達しているといったように、その映像美は多くの人に絶賛されました。特に海外での評判は非常に良くて、日本らしさが強く感じられる美しさに、心を打たれた人が多いようです。これほどまでに独特の美しさが評価されたアニメ映画は、アニメ大国と言われる日本でも他にはないと言えるでしょう。point 300 | 1
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その一方で、この作品に対する悪い評判も少なくありませんでした。その悪い評判の中でも目立ったのがストーリーに関する不満です。内容が二時間を超える映画にしては薄い、盛り上がりに欠ける、昔話そのままのラストで意外性がないといったような声が出たのです。誰もが知っている物語の映画化だけに、その原作を尊重しようとすれば、ストーリーに新鮮さや面白みが感じられなくなってしまうのは、ある意味仕方のないことだったのでしょう。また、高畑監督が特にこだわったのが映像表現だったことから、ストーリーに関しては力をあまり入れられなかったのかも知れません。point 343 | 1
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またキャラクターに関しての不満の声もありました。例えば主人公のかぐや姫は、求婚された際に相手に突き付けた条件によって何人もの男性を不幸にしてしまうので、まるで悪女のようだとよく言われました。また彼女が思いを寄せる幼馴染の捨丸は、妻子が出来たにもかかわらず再会したかぐや姫と良い雰囲気になってしまうので、だらしないダメ男だと言われましたし、かぐや姫を大事に育てた養親の翁も、いつの間にか地位や名声に固執するようになったために、最低の親だと叩かれました。そういった評判を見ると、高畑監督の得意とするリアルな人物描写が、残念ながら悪い方に作用したのかも知れません。point 349 | 1
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このように、高畑勲監督のかぐや姫の物語という作品は、映像表現に着目する人たちには素晴らしいと評価され、ストーリーやキャラクターを重視する人には不満だと評価されるといったように、評判がかなりはっきりと分かれる作品だったのです。