管理に不備があって盗まれた車が交通事故を起こした場合、賠償責任は車の所有者にあるのか…。
この点が争われた訴訟の弁論が今月3日、最高裁第三小法廷で行われました。
弁論は二審の結論を見直すために必要な手続きで、「盗まれても仕方がない状態で保管されていた」として所有者の責任を認めた二審判決が見直される可能性があります。
事件は、2017年1月の深夜、川崎市内の金属精錬会社の独身寮に止めてあったワゴン車が、忍び込んだ男に盗まれたことから起こります。
車が盗まれてから約5時間後の早朝、男の居眠り運転により、4台が絡む多重事故が発生。
巻き込まれた車を所有する企業2社と、うち1社と自動車保険を契約していた損害保険会社の計3社が、事故を起こした車を所有する精錬会社に修理費用などの支払いを求めて提訴しました。
訴訟では(1)車の管理に問題はなかったか(2)盗難と事故の間に因果関係があるかの2点について争われました。
(1)については、一、二審とも車を止めた社員がドアを施錠せず、鍵を運転席の日よけに挟んだままにしていたことから、「管理に過失があった」と認められました。
一方で、(2)の判断は、盗難と居眠り運転が事故の原因で「管理の過失が事故を招いたとは言えない」として精錬会社に責任はないと判断(一審/東京地裁)。しかし、二審の東京高裁では、車が深夜に盗まれた点に重視し、「自動車盗、居眠り運転、事故という一連の流れを予想できた」と認定。精錬会社に総額約790万円の賠償を命じました。point 296 | 1
上告した精錬会社は、二審の判断は(1)も(2)も誤りだと主張。この日の弁論で、「車は私有地に保管しており、施錠の有無はドアを開けないと分からない。事故は第三者の意図的な窃取と居眠りという重過失によるものだ」と指摘しました。
同じような裁判例は過去にもあり、今までは車の管理状況や盗難から事故までの時間、事故の状況などを検討し、賠償責任の有無を個別に判断してきたようです。
2018年6月6日には、名古屋地裁で、弁当の配達員がエンジンをかけたまま車から離れ、その間に盗まれた車が死亡ひき逃げ事故を引き起こしたとして、亡くなった女性の遺族が車を保有する弁当製造会社(東京都)を相手取り、損害賠償を求めた訴訟の判決が下されました。この時の裁判官は、弁当会社の責任は認めず、遺族の請求を棄却しております。
本判決は、翌年の1月21日、最高裁で下される予定です。
どのような判決が下されるのか、注目です。