鹿児島にある古い古い木造駅にも、“ねこ駅長”がいるという情報が‼「高齢なので夏場は療養していました。健康状態が良ければ駅にいますが…」とのことです。
鹿児島県霧島市にあるJR嘉例川駅。鹿児島の玄関口・鹿児島中央駅までは、九州新幹線で博多駅からわずか約1時間半。そこから日豊線に乗り換え、錦江湾に浮かぶ雄大な桜島を眺めながら、約40分で隼人駅に到着します。そこから肥薩線で約20分揺られると、山あいにある嘉例川駅が見えてきます。
焦げ茶色にくすんだ木の柱や屋根、看板、椅子…。周囲の紅葉も相まって、まるで100年前にタイムスリップしたような感覚になります。映画やCMのロケ地として、旅番組にもしばしば登場する肥薩線でも有名な駅の一つです。point 296 | 1
鼻と両目の周囲が黒っぽく、どこかタヌキのよう。でも、透き通ったブルーの瞳が、なんとも上品で美しい、白と茶の毛並みの美しい猫がいました。「この子が嘉例川駅で『観光大使』を務める“にゃん太郎”です」と、嘉例川地区活性化推進委員会委員長の山木由美子さん(68)は紹介します。山木さんが首もとを優しくなでると、にゃん太郎はうれしそうに目を細めました。point 228 | 1
嘉例川駅の歴史は100年以上前の1903(明治36)年にさかのぼります。木造の駅舎は開業当時のもので、国の登録有形文化財でもあります。全国的にも珍しい「特急が止まる無人駅」として知られています。鹿児島空港や霧島温泉も近く、駅を行き交う人の中には、スーツケースを持った旅行客も目立ちます。
にゃん太郎は4年前の秋、突然、駅に現れました。待合室にあるかごの中で、丸くなってすやすや眠っていたそうです。獣医師によると、推定15~16歳の雄。人間なら80~90代に相当するご長寿です。人懐っこく、耳は地域猫として去勢手術をしたV字印の「さくら耳カット」が施されています。
ちょうどそのころ、嘉例川駅は利用客減少にあえいでいました。一時はJR九州の豪華寝台列車「ななつ星」の停車駅でしたが、コースの変更に伴い通過駅になってしまいました。そんな時、救世主のように姿を現したのが、にゃん太郎でした。point 247 | 1
「飼い主がいるかも」と山木さんは5~6カ月ほど駅で面倒を見ましたが、誰も名乗り出ませんでした。駅の“看板猫”として紹介し、新たな生活が始まりました。無人駅のため“駅長”のポストがなく、2016年5月から地区活性化推進委の「嘉例川観光大使」として活躍しています。
観光列車「はやとの風」が駅に停車する時間に合わせて、午前10時半ごろ出勤。午後4時ごろまで駅で過ごし、夕方には山木さんの車に乗って、一緒に退勤します。
にゃん太郎も、駅は自宅ではなく“職場”と認識しているようです。夏休みで利用客の多かったある暑い日、駅から2キロほど離れた山木さんの自宅へ、先に“1人で”帰っていたことがあったといいます。「夏バテで早退したんですかね。猫もワークライフバランスが大事ですから。」
嘉例川駅といえば、鹿児島県産のイモと野菜の天ぷら「ガネ」が入った駅弁が、JR九州の駅弁ランキングで3年連続1位に輝いたことでも有名で、販売日の週末には行列もできます。近くの霧島温泉は、旅の疲れを癒やすのにぴったりです。「観光客はもちろん、地域の子どもたちの声でにぎわう駅にしたい。イベントは観光客や地元の人、親子連れの交流の場にもなっている。」と山木さんは言います。
高齢のため勤務を休む日も多いようですが、にゃん太郎の人気は根強く“退職”はまだまだ先になりそうです。「一生に一度の写真をここで」と、台湾から結婚式の前撮りに訪れた人もいるそうです。「レトロな駅舎や町の雰囲気を味わってほしい」と山木さん。point 358 | 1
利用客に優しくなでられ、ご満悦のにゃん太郎のとろーりとした表情がたまりません。にゃん太郎に会いに行く際は、「餌を与えない、背中を触らない、フラッシュ撮影をしない」などのルールを守って癒されてくださいね。にゃん太郎から寄ってきたときは頭や顎などを優しく撫でても大丈夫とのことです。