「会社内という狭い空間で上司からストーカーに遭った。声を上げにくい環境と立場を利用された」
派遣社員だった2年前、既婚の男性上司と2人で懇親会会場を下見した帰り道、抱きつかれて体中を触られたとある女性は語りました。
女性は同僚に相談。同僚から報告を受けた会社役員に面談で「(契約)社員になれるよう考えているからね。この話は今日でおしまい」となだめられたそうです。専業主婦を経て久しぶりの仕事。ゼロから勉強し、やりがいも感じていました。「今の年齢で社員になれる望みはここ以外無い」と不満をのみ込みました。
それ以降も男性の行為はエスカレート…。隣席から「ふれたい」と書いた付箋を渡され、勤務中も退勤後も「好きが止まらない」「誰とどこに出掛けるの」などメールや電話がくる。私用携帯を業務でも使っており、連絡先を知られていました。電話を取り損ねると男性は「何してたんだ」と激高。「(派遣の)契約を切る切らないの権利は僕にある」と言い、業務中の無視が数日続くこともあったといいます。
女性は「毎日会社で顔を合わせ、寝る寸前まで連絡が続く。こんな毎日を送っていると、支配下に置かれるというか感覚がまひし、相手に合わせなくてはと混乱していた」「好きと言ってくれ」と求められると「好きです」と答え、性行為の要求に応じたこともありました。
そんな中、同僚の前で「辞めろ」と怒鳴られ、耐えきれず会社の相談窓口に通報。上司は異動しましたが、昨年9月にはLINEのメッセージが3日間で約70件も届いたことから身の危険を感じ、警察署に駆け込みました。
警察官は「警告の電話をします」と言い、男性からの連絡は途絶えました。女性はうつ病を発症し、休職期間が社内規定を超過。職を失いました。
ストーカー規制法は、「つきまといや待ち伏せ」「面会や交際を要求」「連続電話やメール送信」「性的羞恥心を害する文書や図画を送る」などの行為を繰り返すことをストーカーと定義し、警告や禁止命令を出します。
一方、社内ストーカーは、「日常的に長時間接する」「日中の行動や帰宅時間を把握、監視される」「連絡先など個人情報を入手されやすい」「勤め先との関係悪化や処遇の不利益への懸念から、相談をためらう」などの特徴があります。
警察庁の2018年の統計によると、ストーカー事案の対応件数2万1556件のうち、関係性は交際相手(元を含む)が最多で4割。次いで同僚や職場関係が2786件(13%)で、4年前より約400件増えるなど増加傾向にあります。
痴漢同様、ストーカーもまだまだ法や社内規定の改善の余地がありそうです。