「ひだまりスケッチ」「さよなら絶望先生」などの人気作品に出演し、「這いよれニャル子さん」では主題歌を歌唱し声優アワードにも名前が挙がった人気声優、松来未祐さんをご存知ですか。その細いながらも主張ある独特の声質で唯一無二の存在感を放っていた松来未祐さんですが、残念ながら2015年10月27日に永眠されました。その命を奪った病気である慢性活動性EBウイルス感染症および悪性リンパ腫について説明します。
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思春期の若者に多い感染症
まず、EBウイルスとはどのようなウイルスなのか、と言えばリンパ系の悪性腫瘍に関わりのあるウイルスである、ということが出来ます。
免疫細胞であるBリンパ球に感染するこのウイルスは決して珍しいものではなく、日本国内でもキス病、という別名を持つ伝染性単核球症という感染症の原因として知られています。思春期の若者に多いこの感染症は特に致死的ではなく、発熱や倦怠感、肝臓や脾臓が腫れるなどの症状が一過性に生じ、特別な治療なしに全治することが多いのです。
感染が持続してしまうことは極稀
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しかし、運悪くウイルスが上手に排除されず、感染が持続してしまうことがごく稀にあります。松来未祐さんは運悪くこの状態であり、感染したままのウイルスが大人しくしているのであれば特に問題はありませんがこれが万が一活発に活動してしまうと劇的な症状が現れます。感染されたBリンパ球が自己免疫システムに認識されターゲティングされることが原因で、急激な周期性の発熱などを生じます。この状態が持続すると悪性リンパ腫に発展する可能性があります。
リンパ球の悪性腫瘍
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悪性リンパ腫はリンパ球の悪性腫瘍であり、異常な上手く働かないリンパ球が増えることで発汗や発熱、体重減少などの症状が現れます。首などのリンパ節が異常増殖した腫瘍リンパ細胞によって腫れあがり、皮膚の上からでも触知できるようになります。白血病とは異なり、血液を介して全身に異常細胞が分布することはありませんが、リンパ系を介して他の臓器に転移する可能性がある、という点では他の悪性腫瘍と変わりません。
治療方法として
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治療としては放射線療法やリツキシマブというBリンパ球をターゲットにした抗体の投与が行われます。しかし、多くの悪性リンパ腫が遺伝子の変化によって起き、EBウイルスが原因のものであっても有効な抗ウイルス薬が存在しないため悪性腫瘍のリスクファクターを取り除く、といった対策が立てづらく治療が悪性腫瘍化してからに限ってしまいます。
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稀有な疾患で初発症状が風邪のようなものであるため見過ごしてしまいかねないこの疾患ですが、松来未祐さんの一件が世に知られていく契機になりました。松来未祐さんのご冥福をお祈りします。