先輩rockyouとは、2010年4月から2015年3月まで日本テレビ系列で放送されていたトークバラエティ番組のタイトルです。番組前半ではゲストタレントのトークがメインで、後半は「心揺さぶるトゥルーストーリー」と題し、ドキュメンタリーVTRを鑑賞するスタイルの番組でした。
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思わぬことで目の前に壁が立ちはだかってしまいどん底まで落ちてしまった人が、自らの努力や大勢の人の支えによって希望を見出し復活すると言う内容が多く、若者を中心に高視聴率を誇る番組でしたが、全252回目の放送で番組は終了しました。多くの視聴者を感動の渦に巻き込んだ先輩rockyouですが、中でも記憶に残るエピソードとしては、元競輪選手だった多以良泉己さんの話があります。
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多以良泉己さんは前途有望な競輪選手で、実力に応じて分けられるクラスで最上級のS級を目前にしていましたが、レース中の接触事故に巻き込まれコンクリート製のコースに頭からたたきつけられ、意識不明の重体に陥ってしまいます。奇跡的に命は助かったものの、高次脳機能障害と左脚感覚麻痺の後遺症が残ってしまい、競輪選手を断念せざるを得なくなりました。涙をのんで引退したものの生きていく気力も失ってしまい、絶望のどん底でリハビリを行う毎日を過ごしていましたが、ある日、リハビリの一環として作ったパンを食べた友人が大変美味しいと褒めてくれたことがきっかけで、本気でパンを作ってみることを思い立ち、これを支えにしてリハビリを続け、奥さんの介助の元、日常生活ができるまでに回復することができました。point 411 | 1
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本格的にパン作りを始めてみる前に、各種のイベントでテスト的に販売してみたところ「どこの店よりも美味しい」とあっと言う間に完売してしまうほど評判を呼び、多くの人の喜ぶ顔をもっと見たいと言う想いから作り方や材料の研究を重ねて、本格的にパンを作り始めることとなりました。鎌倉に工房を建て、毎日の気温や湿度に合わせて配分やこね方を考えながら手作業でパンを焼き始めましたが、障害の残る体では思うように作業も捗らず、一度に焼けるのは一斤のパンのみで、どんなに頑張って作っても1日に5斤を焼き上げるのが精一杯です。しかし、多以良さんのパンを食べた人からは「こんなに勇気の出るパンは他には無い」「生きる力をもらえるパン」と多くの感想が寄せられ、インターネットのクチコミでは「天使のパン」として、さらにその名前が広まることとなります。point 429 | 1
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現在では多以良さんの元には評判が評判を呼び日本中から注文が舞い込んできて、いまや10年近く待たないと購入することができないほどの人気となっています。現在、ホームページ上ではパンの他にケーキやクッキーなども販売していますが、今作っているパンは2010年に予約した人の分となっており、更なる予約殺到により14年以上待ってもらえる人のみ購入ください、とのお願いが記載されています。手足のしびれや頭の痛み、それに伴う吐き気やふらつきなどの後遺症が今でも残っているので、多以良さんの体調によってはパン製造ができない日もあるため、タイムカプセル的な感覚で多くの人が今日も多以良さんのパンを待っているのです。point 365 | 1
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リハビリの一環で作ったパンによって、絶望のどん底から立ち上がった多以良さんは、今、再び自転車に乗り始め、パラリンピック出場を新たな夢として、多忙な日々を過ごしています。先輩rockyou包装後、更に多以良さんの知名度が高くなり、他の番組や雑誌などのメディアにも紹介されることが多くなっていますが、今日も奥さんと2人で「天使のパン」の到着を待ちわびている人のために作業を続けています。