百貨店の新しい挑戦として、大阪の百貨店で新しい取り組みが話題になっています。大丸梅田店の一部の売場で「生理バッジ」を胸に着けて接客を行っているようです。「生理バッジ」とは、生理中の女性スタッフが周囲に知らせるためのものだそうでバッジをつけるか否かはスタッフ個人の判断に任されています。このような取り組みに様々な反響が出ているようです…。
「生理バッジ」取り組みを開始
大丸梅田店に11月22日に新しくオープンした「michi kake(ミチカケ)」という売り場で初めて生理バッジの取り組みを開始。この店舗は「月のみちかけのように、あなたのリズムに寄り添う」というコンセプトで、女性の身体と心の変化に寄り添った、美容アイテム、コスメ、漢方茶、アパレルといった様々な商品を取り扱っています。また、生理バッジは名札の下に取り付けられるようになっていて、生理をテーマにした漫画「生理ちゃん」のキャラクターが描かれています。point 301 | 1
ミチカケのねらいについて大丸梅田店の店長は以下のように話しています….
「性や生理といったテーマはこれまでタブー視されオープンにはされてこなかったが、昨今のフェムテック等の拡がりにも見られるように、もっとオープンに語られてよいものに変わってきた。我々も商いをする上で売れるものをできるだけ集めたいという想いがあるが、潜在的なニーズを拾い上げるトライも重要だと考えている。今後も百貨店に存在価値があるとすれば、百貨店がそういった新しいテーマを取り上げることでメッセージを発信し、世の中ごと化できる点だと思う」point 258 | 1
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批判の声も絶えない
しかし、この新しい取り組みに対して、「店員が生理だということは客には関係ない」、「従業員に生理の状態をオープンにさせるような企業はおかしい」などと批判の声も絶えないのが実情。また、時代の変化とともに、百貨店へのニーズは年々減ってきています。そのため、阪急阪神百貨店が日本で初めて阪急メンズ東京でアダルトグッズの常設店を展開するなど、生き残りをかけて挑戦し続けています。
現在、多くの職場では男女が共に働き、業務内容や責任に男女差がないように企業も働きかけている。しかし、男性とは違い女性にはホルモンバランスの変化があり、女性の身体や心に大きな影響を及ぼします。生理中の体調不良はもちろんですが、生理前に訪れるネガティブな影響を及ぼすPMS(月経前症候群)と呼ばれるものもあります。
人それぞれ症状は違いますが、身体的には肌荒れ、便秘、腹痛やむくみなどを引き起こし、精神面ではイライラや集中力・判断力の低下、無気力などの影響があらわれます。生理期間は一般的に3~7日間程度。体調不良の期間を3日間としても、年間で約40日間、営業日で考えると2カ月分弱、体調が優れない状態で仕事をしていることになります。しかし、こういった変化は、実際に経験したことがない男性が理解することは難しいでしょう…。男性には実感できないですが、そのようなつらい状況に耐えながら何食わぬ顔で業務をこなしている女性が大勢いるのです。point 265 | 1
実際に働く女性が生理中であることを周囲に知らせることで共に働くスタッフに生理中であることを認識してもらえば、業務を分担したり、在宅ワークの環境を整えてくれたりといったサポートが得られるメリットが考えられます。
ミチカケのスタッフいわく、「私のチームでは風邪など体調不良と同じように、生理が辛い場合も伝えやすく休みやすい雰囲気づくりを心掛けています。そうすることで、辛いときは仕事を分担できたり、本当に体調が優れないときは休暇を勧めたりすることができます。私も生理が辛ときは積極的に休みをとるようにしています」と話しています。
ミチカケでの生理バッジの取り組みはすでに複数のメディアで報じられ、バッジの着用が強制だという誤解もあって、多くのバッシングに晒されているようです。また、接客業である百貨店で、来店客にまで販売員の生理の状態を共有することは必要だろうか。との声も上がっています。
しかし、大丸梅田店はこのような批判が起こることは、覚悟の上だったそうです。ミチカケのオープンの前に漫画「生理ちゃん」の中で架空の「大春百貨店」の販売員が生バッジを付けて接客を行うコラボストーリーが公開されており、そのの中でもお客さんやネット上の声として様々な批判が描かれているようです。批判覚悟のうえで今回の取り組みを開始した狙いとは何なのでしょうか…。
その理由として、ミチカケ担当者は「これまで百貨店は美しさや格好良さといった表層的なニーズに寄り添ってきたが、深層の悩みには寄り添ってこられなかった。ミチカケの取り組みを通じて、お客様の内面にも寄り添っていきたい」と話しています。
自身の性や生理の悩みはデリケートな悩みなので人に相談する機会も少なく、ましてや百貨店の店員に話そうと思う人は少ないはずでしょう。しかし、そんなきっかけ作りのアイデアの一つとして生理バッジが実験的に導入されたということです。今後ミチカケとお客さんとの関係性が深まれば、よりオープンなコミュニケーションが生まれるはずです。point 213 | 1
結局…
しかし、批判が相次ぎたせいか、バッジの着用の取りやめを決めました。ただ、従業員同士の「生理の意思表示」は別の方法で続けるということです。
今回の生理バッジの取り組みをきっかけに、女性だけでなく男性にもあらためて生理について考えることができれば十分に価値のある取り組みになることでしょう。現代社会において、男女平等とはいえ、身体の作りが異なるので全く平等とはいかない場合もあります。それでも理解し合って寄り添っていくことが重要ではないでしょうか。新しい取り組みをチャレンジしたミチカケの今後の発展を願いたいものです。