権力を行使する立場にある人が最も自戒すべきことの一つは「公私混同」であるーー。
あろうことか、安倍晋三首相にその疑いが持たれています。
自民党は6千人、安倍晋三首相は1人で1千人もの招待者枠を得ていた上、招待者リストは全て破棄されていた首相主催の「桜を見る会」。
公費で首相が主催する「桜を見る会」は、吉田茂首相時代の1952年から続く恒例行事であり、
菅義偉官房長官によれば「各省庁の意見を踏まえ、各界で功績、功労のあった人などを幅広く招待している」といいます。
一方で数多くの問題が指摘されている「桜を見る会」、
「行政の私物化だ」と追及を強める野党に対して政権側は、数が膨れ上がったことは「大いに反省」としているものの、
公私混同はなく公選法違反にも当たらないと否定します。
しかし、実際「桜を見る会」には各界の著名人や芸能関係者も招かれており、
満開の桜の下で酒食の提供をふんだんに受ける「特権的な催し」との印象は強く、世論の批判はやまない。
そこで、省庁の推薦枠で招待され、実際に参加したことのある東京在住のAさん(52)に話を聞いてみたところ、
やはり浮かび上がったのは、明らかな「公私混同」ぶりだといいます。
「X社内には政治色の強い部署があり、そこの部長職が代々人選しています。リストに入るのは、多くがその部署の管理職やOBで、功績や功労のあった人はいませんね。結婚間近の若手社員は男女を問わず、よく加えてもらっていました」
Aさんは、東京に本社がある情報通信分野の大手X社に勤務しています。
X社には同業他社と同様に毎年1月か2月ごろ、政府から招待者の推薦依頼が届くため、
社内の「政治色の強い部署」(Aさん)を中心に20~30人前後のリストをつくり政府側に提出しているそう。
推薦要請を受けている他業種の企業は「知らない」といいます。
リストに基づき、3月ごろには会社にまとめて安倍首相名の招待状が届いたといい、
Aさんは2018年4月21日に開催された桜を見る会に初めて参加してみることにしたといいます。
入る際に手荷物検査はなく、招待状もチェックされなかったと証言するAさん。
同封された、通し番号入りの受付票を渡し、引き替えにもらうリボンを付けるだけで、
すんなりと会場に入れてしまったのは驚きだったといいます。
普段の入場料は大人200円で、Aさんが中に入ると、芝生広場の左側に大型の白いテントが複数張られ、
そこが飲食と模擬店の会場になっていたといいます。
しかし、テント内のテーブルにあるのはオレンジジュースやウーロン茶類だけ。
お酒のふるまいはほぼ終わり、焼き鳥も品切れになろうとしていたと当時の状況について語っています。
Aさんは桜を見る会で「安倍首相の地元・山口の銘酒である獺祭が飲めたそうですが、一本もなかったですね」と振り返るのですが、
今にして思えば、先乗りしていたのは安倍首相や自民党の大勢の支援者だったのではないかと話します。
そうであれば、やはり公費で支援者らに優先的に飲食させたことになるのではないか、と指摘します。
また本来の目的である「桜を見ること」、についても聞いてみました。
桜はというと、広い御苑内の方々で咲いていたであろうソメイヨシノはとっくに散り、全て葉桜になっていたと話すAさん。
この時期に咲いているのは八重桜で、ところどころにしか植えられていないが、ほぼ満開できれいに咲いていたそう。
9時半ごろになると入場者もかなり増え、大勢の人が散策をしたり写真を撮ったりしていたと話します。
また、音楽隊が演奏しているステージが設けられており、
芝生広場を横切って中央の池に向かってロープが張られ、幾重もの人垣ができていたところ、
「安倍首相が通るのだろう」と思い待っていたら、複数のSPとともに安倍首相がやってきます。
安倍首相はあちこちから「安倍総理ー」「あべっちー」などと声援を浴びると笑顔を絶やさなかったそう。
一般客が入られないエリアには著名人や芸能人らが多くいたそうで、
歌手のピコ太郎さんら、見たことのあるタレントが何人か確認できたといいます。
そうこうするうちに桜を見る会はお開きとなります。
10時半には一般客の入場規制が解除されることとなり、Aさんは終始華やかな雰囲気で、
お土産ももらえて満足だったとしつつ「安倍首相や自民党の支援者も同じように感じたのなら、もっと政権を応援しようという気持ちになったのではないでしょうか」と語り、〝公費接待〟の効果のほどを語りました。
しかし野党からも多く指摘を受けている、
安倍政権の「政治とカネの問題、行政の私物化、公文書のでたらめな扱い」--
強く批判されているように、政権幹部や与党が一方的な優先枠を得て何千人もの支援者を招き入れていたのは、公私混同以外何ものでもありません。
批判の高まりを受け、菅長官は会見で来年の開催中止を表明しましたが、それで済む問題ではありません。
ここは首相が自ら国会へ出向いて説明を尽くすべきではないだろうか…。
「公私混同」を疑われる首相の下で国政が円滑に進むとは思われないですね。