「切り裂きジャック」とは
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「切り裂きジャック」と言えば知ってる方も多いと思いますが、19世紀イギリスの連続猟奇殺人鬼です。事件についての詳細を簡単に述べると、19世紀イギリスのロンドンにて、約2カ月という短期間に、主に中年売春婦が5人、ほとんど同じ手口で殺害されました。その手口とは「人目に付きにくい裏路地で、鋭利な刃物によって被害者の喉を掻き切る」というもので、被害者のなかには腹部を切り裂かれ、内臓を持ち去られた人物もいます。ただし、最後の犯行だけは、それまでのケースとまったく異なるもので、犯行現場は被害者の部屋、被害者は25歳と若い売春婦でした。さらに彼女だけは、全身をバラバラに分解され、内臓や身体のパーツが部屋中にばら撒かれていたと伝えられています。point 383 | 1
連続殺人事件は未解決事件に
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最後の凄惨な殺人の後、切り裂きジャックの犯行は途絶え姿を消すという結果になりました。その後、容疑者特定に向けて警察は捜査に踏み切りましたが、当時の警察は容疑者と犯人を繋げる決定的な証拠を掴めず、この事件は犯人が捕まっていない「未解決事件」となりました。そして「新聞社へ犯行声明文を送る」という、世界ではじめて認知された「劇場型犯罪」であるところから、この事件は世界的に知られる未解決事件となっています。切り裂きジャック事件の奇妙な点は、「短期間で連続殺人が途絶えた」という点です。世界の名だたる連続殺人犯はほぼ例外なく、殺人衝動を抑えきれず犯行を続けたことが原因で捕まっています。本事件のように犯行がぷっつり途切れる、というのは、非常に珍しいケースなのです。point 410 | 1
犯行声明が届くまでの経緯
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そして特に注目したいのは、犯行声明文が届くまでこの連続殺人事件は「ホワイトチャペル連続殺人事件」と呼ばれていたことでしょう。実は「切り裂きジャック事件」という皆様もよく知る事件名は、自身を「切り裂きジャック」と自称した、1通目の犯行声明文の名前から付けられたものなのです。日本におけるリッパロロジスト(切り裂きジャック研究家)の第一人者である作家、仁賀克雄氏は「この声明文に”切り裂きジャック”という命名がなかったら、この事件は19世紀のいち犯罪実話として、これほど多くの人々の記憶にも歴史にも残らなかったろう」と、切り裂きジャックを取り上げた著書の中で解説しています。point 371 | 1
新たな証拠発見か
イングランドの起業家ラッセル・エドワーズの著書『切り裂きジャック 127年目の真実』(角川書店)によると、切り裂きジャックに繋がる新たな証拠を見付け、そこから真犯人に繋がる証拠を見つけ出した、といいます。
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ラッセル氏が手に入れた新たな証拠、というのは「4件目の殺人の被害者キャサリン・エドウッズの持ち物だという、殺害現場に残されていたショール」です。その出自は「オークションに出品されていた(出処は確実ではない、と注釈がついていた)」、「4件目の殺害現場に駆け付けた警察官が拾い着服して持ち帰り、その子孫が今まで一度も洗うことなく保管していた」という、非常に出処の怪しい品物です。ラッセル氏はこのショールを全面的に信じました。なぜならこのショールには、血液や精液のような複数のシミが残されていたためです。そしてショールをDNA鑑定に出し、シミからDNAを抽出しようと試みます。さらにラッセル氏は、キャサリンの子孫及びコスミンスキーの子孫、つまり被害者と容疑者双方の直系血族からDNAサンプルを提供して貰うことに成功したのです。point 432 | 1
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そしてショールから採取・増幅された複数のmtDNA(ミトコンドリアDNA)と、被害者子孫のmtDNA、容疑者子孫のmtDNAを比較・分析したところ、それらはほぼ一致したのです。先述した通り、ミトコンドリアDNAが一致しただけでは同一人物と断定できません。ですがこの分析の結果、ショールから採取されたmtDNAと被害者子孫のmtDNAからは遺伝する同一の突然変異が見つかり、さらにこれを保有する人物は29万人に1人の確率だ、というのです。これによってショールは完全に被害者キャサリンのものと確定し、かつそのショールから採取された別のmtDNAがコスミンスキーの子孫のものと一致したことにより、ラッセル氏は「アーロン・コスミンスキーこそが切り裂きジャックの正体だ」と断定したのです。point 413 | 1
真犯人判明か?
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とうとう切り裂きジャックの正体が判明した……と思いきや、この発表がなされるや否や、即座にmtDNA鑑定への疑惑が浮かび上がりました。イギリスの新聞「The Independent」紙は、DNA鑑定専門家からの「DNA鑑定結果に致命的な誤りがある」という指摘を報道しました。ラッセル氏がDNA鑑定を依頼した生物学者は「採取サンプルと被害者の子孫のmtDNAに、29万人に1人の珍しい突然変異”314.point 275 |
1C”があった」と報告しています。ですが専門家によれば「この突然変異の表記は”315.point 55 | 1C”と書かれるべきもの。同書の報告を読む限り、それはヨーロッパの人の99%が持つありふれたDNA変異である」というのです。point 123 | 1
正体はいつ明らかになるだろうか…?
リッパロロジストの執拗な追跡を逃れ、再び19世紀ロンドンの霧中へと消えていった切り裂きジャックの正体は、いつ明らかになるのだろうか。