「常にマイクが入っていると思え」。これが政治における黄金律。
しかし、政治家も人間。多忙のせいか、彼らもうっかりこのルールを忘れてしまうそうです。
最近では、北太平洋条約機構(NATO)の首脳会議の場で、カナダのジャスティン・トルドー首相がアメリカのドナルド・トランプ大統領を話題にし、他の首脳たちと談笑する様子が、カメラに捕らえられてしましました。
これに対し、トランプ大統領は、トルドー首相は「裏表がある」「僕は彼をいいやつだと思うが、僕は面と向かって(国内総生産の)2%分(の防衛費)を支出していないと指摘したんだ。向こうはそれが気に食わないんだろう」「カナダは2%分を支出していない。そうするべきなのに。カナダには金があるんだから。いいか、僕はアメリカを代表しているんだ。トルドー氏は今よりもっと支出すべきだ。彼はそのことを理解している。(中略)気に食わないのは分かるが、そういうものだ」と反発しました。
このようなうっかりミスで漏れた発言によって、政治家は恥をかくだけでなく失脚、時には国家間の対立を招く事態に陥ることもあります。
下記は過去に起こった失態の数々をご紹介します。
◎ジャック・シラク ~料理が下手な国の人は信用できない~(2005年)
フランス共和国 第22代大統領(任期:1995年5月17日~2007年5月16日)
シラク大統領が2005年に、ロシアを訪問中に発言したとされています。
仏紙リベラシオンによると、シラク氏はロシアの飛び地カリーニングラード市の750周年記念式典で、ロシアとドイツの首脳と話していました。マイクが切れていると思ったシラク氏は、イギリスのことを指して、「あんなに料理が下手な国の人は信用できない。あの国はフィンランドの次に食事がまずい」と発言したとされています。
その他にも、「イギリスが欧州の農業にもたらしたものといえば狂牛病だけだ」と批判しました。
公に放送されることはなかったものの、シラク氏の広報チームは一度もこの発言について否定しなかったことから、事実で間違いないと考えられています。
当時、イギリスとフランスの関係は、農業の補助金やフランスのイラク戦争不関与などで冷え切っていたことから、シラク大統領はこのような発言をしたと考えられています。
◎ロナルド・レーガン ~5分後に爆撃を開始する~(1984年)
アメリカ合衆国第 40代大統領(任期:1981年1月20日~1989年1月20日)
「アメリカ国民の皆さん、私はきょう、ロシアを永遠に非合法化する法案に署名しました。5分後に爆撃を開始します」毎週行っていたラジオ演説のサウンドチェック中、レーガン大統領はスタッフ相手にこんな冗談を言いました。このジョークは放送されなかったものの、録音されており、後日公開されてしまいました。
その結果、ソ連ではレーガン氏に対する抗議が巻き起こり、ソ連軍は一時、極東に警戒態勢を敷く事態となりました。
◎ジョージ・W・ブッシュ ~おい、ブレア!~(2006年)
アメリカ合衆国第 43代大統領(任期:2001年1月20日~2009年1月20日)
先記の、ロナルド・レーガン米大統領時代、彼の元で副大統領を勤めていたこともあるブッシュ大統領。そんな彼も、大統領に就任後に失態を犯します。
サンクトペテルブルクで行われた主要8カ国首脳会議(G8サミット)で、ブッシュ米大統領は、トニー・ブレア英首相とざっくばらんな会話をしていました。
「Yo, Blair! (おい、ブレア! )」として知られるこの会話はまず、ブッシュ氏がブレア氏に「おい、ブレア!元気か?」と話しかけ、ジャケットの贈り物に感謝した後、レバノンの武装勢力ヒズボラについて侮蔑的な発言をしました。シリアがイスラエルとの摩擦の中でヒズボラを支援していることに触れたブッシュ氏は、「ヒズボラにこれ(ののしりの言葉)を止めさせるために、国連にシリアをどうにかさせるべきだ」と発言。
「コフィ(・アナン国連事務総長)にアサド(シリア大統領)に電話をかけさせて、ことを動かすべきだ」
ブッシュ氏の「おい、ブレア」という呼びかけは、ブッシュ、ブレア両氏のライバルによって揶揄されました。一方で、ブッシュ氏は実は「Yeah, Blair(そうだ、ブレア)」と言っていたのではないかと指摘するジャーナリストもいます。いずれにせよ、こっそりとマイクが拾っていたこの会話は、両氏の親密な、しかしたびたび物議をかもした関係をよく表しています。
フランス共和国 第23代大統領(2007年5月16日~2012年5月14日)
2011年にフランスで行われた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)での共同記者会見直前、サルコジ仏大統領がオバマ米大統領の会話に、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相について「もう耐えられない。彼は嘘つきだ」と発言。これに対しオバマ氏は、「うんざりしてるでしょうが、私は彼と毎日やりとりをしなければならない」と返答したと言われています。
このやりとりは数日間伏せられていましたが、フランスのニュースサイト「Arret sur Images」のダン・イスラエル氏によって公になった。実は、共同記者会見の直前、記者団に同時通訳の機器が手渡されたのですが、サルコジ、オバマ両氏が出てくるまではヘッドフォンを付けないよう指示されていたのを、何人かの記者はこれを無視して、待機中の両氏の会話を聞いてしまったそうです。
イスラエルは当時、フランスともアメリカとも関係が悪化していたため、サルコジ、オバマ大統領がこのような発言をしたと言われています。
◎橋下龍太郎 ~チクショー~(1998年)
日本 第82・83代内閣総理大臣(任期:1996年1月11日~1998年7月30日)
1998年7月の参院選で、70議席は獲得すると予想された自民党が、40議席しか獲得できず、大惨敗を喫しました。あまりにも悔しかったのか、居並ぶ記者やカメラマンの前で”チクショー”と参院選開票特番のテレビカメラに映し出され第一声。心底悔しそうに呟きました。
それまでは、「橋龍は怒る、威張る、すねる」「見識はあるが人望はない」などと悪口をよく言われていた彼ですが、これが男っぽくてかっこいいと女性からの人気が上がったそうです。