毎年90カ国以上が参加する、世界規模のミスコンテストの一つ「ミス・アース」ですが、大会の目的として、美しさに加えて「地球環境保護の促進」を掲げており、国連機関もパートナーシップとして掲載されています。その趣旨に興味を持ったすみれさん(仮名)は、数年前に国内予選の一つ、東北大会に出場しました。大会前に環境保護やSDGsなどを専門家に学ぶ機会もあり、「挑戦して良かった」と感じたというが、大会直後にその思いは裏切られたと言います。
全員参加のパーティーで出場者の女性たちはドレス姿のまま男性審査員たちの隣に座らされ、酒の相手をさせられることになったそうです。中にはセク◯ラを疑われる態度を取った男性もいたといいい、大量のフードロスを出す場面もあり、激しく幻滅したそうです。
仕事をしながら演技を学んでいたすみれさんがミス・アースの存在を知ったのは、2021年ごろです。登録していたオーディションサイトを通じ、日本代表の選考を運営しているという企業から「大会があるので出てみませんか」と勧誘を受けました。インターネットで調べてみると、環境問題を訴える女性のオピニオンリーダーを選ぶコンテストと書かれています。国連などがパートナーで、世界4大コンテストのひとつに挙げられているとも書かれていました。この大会は理想的な場所だと感じ、東北大会への出場を決めました。ただ、気になる点はあったそうで、運営企業からは「○○県代表として出てほしい」と伝えられたが、すみれさんはその県と縁もゆかりもない。迷ったものの、挑戦したいという気持ちが勝ったことで運営の意見を飲んだと言います。 大会ではドレスや水着の審査に加え、環境保護について訴えるスピーチ、質疑応答もあります。大会本番は「練習してきたことをやりきれた」と思ったと言い、受賞は逃したものの、環境問題について発信し、世の中を変えるために行動している「同志」ができた、嬉しかった。と語っていました。
大会終了直後の夕食はビュッフェ形式でした。この日までボディメイクのために食事を制限し、さらに当日はリハーサルもあって昼食を取る時間がなかったため、好きなだけ食べようと楽しみにしていた方が多いと言います。ほかの出場者もたくさんの食べ物をプレートに載せ、さあ食べようと席に着いた瞬間、運営企業の担当者が大声で「ディナーのあとのアフターパーティーの時間が早まったから早く行きなさい!」と告げたそうです。みんなまだ食べ始めたばかりなのに、ひとり、またひとりとパーティー会場へと追い立てられます。テーブルには食べかけの大量の食事が残され「環境保護を訴える大会なのにフードロスさせるなんて…」矛盾を感じたが、担当者はかまわず「早く!」とせきたてたそうです。
パーティー会場に着くと、テーブルとソファが並んでいた。テーブルにはアルコールなどの飲み物があり、審査員の多くは大会のスポンサーで、先に席に着いています。それは男性ばかりで、運営担当者は、その中でも中心的な立場の男性の両隣に、グランプリと準グランプリの女性を座らせました。女性はみな大会の時のドレス姿で、スポンサーの男性の1人が挨拶に立ち、「グランプリに選ばれた人々の大会後のスピーチでは、運営への感謝は述べていたが、誰ひとりスポンサーへの感謝がなかった。大会はお金がなければ成り立たないのに」とこう述べたそうです。
スピーチが終わると、女性たちは審査員らにお酌をし、話し相手になり、男性の中には出場者の腰に手を回している姿もあったそうです。アフターパーティ-の異様さは、ほかの出場者たちも感じていた。礼奈さん(仮名)は会場に入った瞬間から「気をつけなきゃ、とスイッチが入った」と言い、部屋は照明が落とされ、ボックスっぽくなっているソファ席が見えたそうです。銀座かどこかのクラブのようだと思った。「ここに座らされるんだ」と知り、直感的に危険を感じたそうです。
終了後、別の出場者が困った様子でいたので話を聞いたところ、この出場者は、あるスポンサーの男性から「普段はどこに住んでいるの?連絡先教えて?バイト先はどこ?」とたたみかけられてうまくかわせず、バイト先や最寄り駅を答えてしまったといいます。その男性から「会いに行くね」とも言われたといいます。「『帰りは新幹線?一緒に帰ろうよ』と言われたら怖い」とおびえていました。 礼奈さんは「国連がサポートしているならきちんとしてるだろうなという安心感をもって応募した」。それだけに、大会を通して心底がっかりしたそうです。「これがミスコンの実情かと思った。二度と出ることはないだろうな」 他の参加者も証言してくれた。「帰ろうとしたが会場の出口には大会関係者が立っていて退席が許されなかった」「ホテルの部屋に来ないかと誘われた子がいた」「腰に手を回して2次会に連れて行こうとするスポンサーを見た」「連絡先を聞かれて答えてしまい後日電話がきて不快だった」とすみれさんも、大会が掲げる趣旨と、実態とのあまりの落差に幻滅したと話しました。
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