日本の公営ギャンブルで最も還元率(45.
7%)の悪いギャンブルとまで言われてしまい、近年は賞金の高額化が進む一方、宝くじ全体の売り上げは伸び悩んでいるようです。
宝くじを管轄する総務省(旧自治省)OBで選択式宝くじ「ナンバーズ」導入に関わった兵庫県の井戸敏三知事は「当たらないからだ」と苦言を呈しました。
「1等・前後賞合わせて賞金10億円の年末ジャンボなど宝くじの高額配当化に伴い当たり本数が減り、「当たらない」との批判が宝くじファンに広がっている…」
自治官僚時代にナンバーズの導入を進めた井戸知事は、11月中旬の定例会見でこう指摘しました。5割に満たない宝くじの還元率についても「見直しも選択肢の一つ」と強調しました。
宝くじに対する強い“愛”がある井戸知事の信念は揺るがず、兵庫県内の国会議員への予算要望でも、当たる宝くじを増やすことを提案したほど。12月の定例会見でも「一番の問題は当たらないことだ」と指摘し 改革の必要性を訴えました。
また 宝くじを運営する「全国自治宝くじ事務協議会」の会長を務める小池百合子・東京都知事に対しても、専門家会議による抜本的な変革を求めたということです。
宝くじの売り上げ減が浮き彫りに
宝くじは「社会貢献」を目的に売上金を地方の財源に幅広く使用できるので、30年度に約66億円の収入がもたらされた兵庫県にとっても「欠かせない財源」(県の担当者)で、宝くじの収益増は地方にとって喫緊の課題となっているのも事実です。
管轄する総務省の担当者は、売り上げ減の要因に若年層への浸透不足のほか、公営ギャンブルよりもインターネット販売が出遅れている点を挙げます。「当たらない」という井戸知事の苦言には、賞金1万円以上の本数を年々増やすなどし、「すでに『当たり感』を出せるよう賞金体系を見直している」と反論。
還元率の引き上げについても、「売り上げの4割は自治体に還元し、他の公営競技以上に直接地方に貢献している」と強調しました。
しかし、宝くじの売り上げは ピークの平成17年度に1兆1047億円を記録した後は 毎年のように減少。24年度以降は1兆円を超えることはなく、29年度は7866億円と20年ぶりに8千億円を割り込んでいるのです。
一方、公営ギャンブルの競馬は中央・地方ともに24年度以降は売り上げ増が続き、地方競馬は昨年度、19年ぶりに6千億円台を回復。競艇も22年度に8434億円で底を打つと昨年度は1兆3727億円にまで回復するなど、宝くじとは対照的な状況です。
キスマイに スクラッチくじ? 打開に向けて…
そのような中で、思わぬ援軍も出ました。人気アイドルグループ「Kis-My-Ft2」(キスマイフットツー)のメンバーが自身のバラエティー番組内で宝くじを買う企画に継続的に挑戦。
宝くじ事務を委託されるみずほ銀行によると、番組に取り上げられた宝くじの売り上げが一時3割増になったといい、担当者は「視聴率も良いようでお互いにうまくいっている」と話しました。
また 苦境の打開に向け、運営側は30年10月、宝くじの9割以上でネット販売をスタート。その場で削って当たりが分かるスクラッチくじは1つの窓口で常時3種を目標に販売する「多併売化」も打ち出しました。1つのくじ当たりの売り上げは少ないが、購入者の幅広いニーズに応えることで全体の売り上げ増を目指す狙いだとか。
こうした動きも影響したのか、30年度はスクラッチくじが12・4%増の516億円、選択式宝くじが4・3%増の3963億円と売り上げが伸びました。ネット販売はわずか8%にとどまるなど課題は残っているものの、全体の売り上げも8046億円と8千億円台を回復しました。
「若者が関心を持つような新しい意味を宝くじに持たせる必要がある。若者はボランティアや地域貢献で承認欲求を満たす意識が高い。宝くじが身近な地域に貢献していると積極的にアピールし、若い購買層を確保すべきだ」
宝くじに詳しい近畿大経営学部の布施匡章教授は、宝くじ浮上の鍵は若者層への浸透だと提言しています。