以前は日本でも頻繁に飛行船が飛んでおり、多くの人が空を見上げて飛行船の存在を知り、そこに書かれている広告を見るという流れがありました。アドバルーンなどもこれに近いものがあり、オープンすれば、ビルの屋上からアドバルーンが上がることが当たり前のようになっていました。しかし、こうした光景は今あまり見ることはできず、様々な憶測が飛び交っています。ビルの影響か、それとも飛行船そのものの影響か、それか上を見上げることが少なくなったのか、様々な説が飛び交いますが、日本で飛行船が飛んでいない理由が明確に存在します。
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そもそも飛行船は元々旅客用として作られており、飛行機よりも確実な輸送手段とも言われていました。そのため、旅客用としての使い方が一般的であり、飛行船による世界一周に成功するなど、一時期は飛行船が旅客の流れを大きく変える期待を見せていました。ところが、1930年代に飛行船の爆発事故が相次いだこと、飛行機の需要が増えてきたこともあり、旅客用として飛行船を用いることにメリットがなくなってしまい、結果として旅客用としての意味合いは廃れ、その多くは広告用として用いられることとなっていきました。
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戦後初めて日本に飛行船がやってきたのは1960年代末のことです。日本にやってきた時は複数の木箱に入れられており、当初は組み立てや広告のレタリングなどで色々とトラブルがあり、ようやく飛行にこぎつけたのは、日本にやってきてから数ヶ月後のことです。いざ飛行船が飛び立つと、それを見に多くの人が近くに集まり、車で追いかけようとする人が多くて渋滞になるなど、社会現象としても有名です。しかし、戦後初の飛行船は暴風によってあっけない幕切れを迎えることとなり、数年間、次の飛行船の登場を待たなくてはならなくなります。 info
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その後、広告主などがコロコロと変わり、日本の空を飛行船が飛ぶ状況が続きましたが、21世紀にはいると、全くといっていいほど飛ばなくなってしまい、現時点では日本で航行されているものはほとんどないような状況となっています。これにはコストの問題と用地の確保の問題があります。コストですが、それを維持するだけで結構な費用がかかります。それに伴う費用対効果はSNSの広まりなどでありそうに見えても、それに関する効果測定が難しいという背景があり、結果としてコストとそれに伴う利益が見合わないというのが真実と言えます。
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一方、用地確保の問題も深刻です。飛行船の場合、どこにそれを係留しておくかというのが大きな問題です。万が一強い風が吹いた場合、予期せぬトラブルも十分に考えられます。その場合のリスクはとても大きいため、広い空き地に係留される形となります。すると、その場所を確保するのが非常に大変であり、都会では場所が限られ、田舎だと広告の効果が薄らぐという問題もあります。これに人件費の問題などを加味するとわざわざこうしたものに広告をつけて飛ばすことのメリットはあまりないのではないかという考えが多く、飛ばしにくい状況となっています。
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決してビルが増えたから飛びにくくなったとか、スマートフォンに気をとられて上を見なくなったなどの理由ではありません。むしろ、多くの人が上を見上げ、SNSにその様子を上げるなど、人気の的になりやすいという側面があります。また、大きなものではなく、かなり小型なものとして登場する可能性は高く、ドローンのような形で飛行をすることは可能です。つまり、今まで多くの人が見てきた形で受け継がれるのではなく、小型ではありながら、誰もが知ってるあの形で航行をしていくことは十分にあり、その実用化が待たれるところです。