中森明菜の2年前にデビューした近藤真彦は当時、すでに日本を代表するトップアイドルだったと言います。近藤のファンであることを公言していた中森と近藤との共演を実現させたのは映画プロデューサーの山本又一朗で、現在は小栗旬などの俳優を抱える芸能プロ「トライストーン・エンタテイメント」の代表でもあります。
山本が映画製作の経緯を「私は明菜がデビューする前の『スター誕生!』の頃から注目していました。もともと親交があった研音に彼女の所属が決まってからは、映画の話を折に触れて打診していました。研音側からの了解を貰って、マッチの所属するジャニーズ事務所のメリー喜多川さんに交渉に行き製作に至ったのが『愛・旅立ち』という映画です」 と語りました。
映画の撮影が始まるに際し、メリーは「山本さん、2人を一緒に連れて行って、食事でもして」と配慮をみせ、山本は2人を誘って会食に出かけたと言います。 山本が買ったばかりのベンツで迎えに行くと、運転好きの近藤は興味津々で、「山本さん、ドライブ行きましょうよ」と声を掛けてきたと言います。
ベンツは夜中の高速を箱根方面に向かっている最中 、2人の会話を聞くともなく聞いていると、ベストテンで2人が共演した時、次の出番が誰で、あの日はこうだったよねと他愛もないことを楽しそうに話していたそうです。2人は恋愛にはまだ程遠い、本当に初々しい感じで、微笑ましかったと言います。しかしトップアイドル2人を連れて行ける店があるはずもなく、山本は帰る途中にある自宅に2人を誘い、パスタを作って2人に食べさせ、ベンツでそれぞれ送り届けたといいます。
時代が昭和から平成に変わり中森を育てたベストテンも終わりを告げ、その数日後、中森は近藤のマンションの浴室で左手を切ったと言います。
[著作権者VONVON /無断コピー、無断転載および再配布禁止(違反時の法的措置)]