「beck」とは少年たちが音楽との出会いによって、バンドを通じて大きく成長していく青春漫画の代表とも言える作品です。、漫画としての面白さだけでなく音楽業界の仕組みを徹底的に描いていることでも話題となり、累計発行部数1200万部を超える大ヒットとなり2010年には映画化されました。映画版も興行収入17.
6億円の大ヒットとなりましたが、原作とは様々な部分で相違点があります。
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登場人物の年齢
主人公・田中幸雄(コユキ)とニューヨーク帰りの天才ギタリスト・南竜介が最初に出会う時、コユキは原作では中学生でしたが、映画版では高校生という設定に変更されています。これはコユキ役を演じた佐藤健が公開当時22歳であったことから、中学生役を演じることが難しいという理由で変更されたのではないかと思われます。それならば中学生役を演じられる若い俳優をキャスティングすればとも思いますが、若すぎる俳優ではコユキ役を十分に演じることができないと考え、また佐藤健がコユキ役に適していると考えての判断だったと思われます。point 355 | 1
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力也先輩の扱い
コユキをいじめる学校の力也先輩の扱いも原作とは異なります。原作では短気な暴れん坊だが曲がった事が大嫌いな一面があったが、映画版ではこの一面が一切なく、ただの悪役になりました。これは2時間ちょっとの間にコミック10数巻分の話をまとめなければいけないという制約のため、本編でそこまで重要ではないシーンだと判断しカットしたのだと思われます。原作のファンの方は少し「ん?」と思うかもしれませんが、この件に関してはさほど違和感なく観ることができます。point 297 | 1
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コユキのボーカル
最も大きな違いはこれです。原作ではコユキの声は「誰もが魅了される天才的な声の持ち主」という設定を持っているため、実写でどう表現されるのかが注目されていました。しかし実際の映画ではコユキのボーカルシーンでは別の音楽に差し替えられていたり、あるいは無音で処理されていたりと全く聴くことが出来ないようになっていました。このような表現をとったのはbeckの原作者であるハロルド作石先生の意向であり、公開当時も賛否両論でした。point 288 | 1
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ただ人によって魅力的な声は違うものですし、普通に歌っていたらどうしても「原作とは違ってがっかりした」という意見が出てくるものです。実際にbeckはアニメ化もされており、そこではコユキのボーカルシーンもありますがやはりいろいろな意見がありました。そこでハロルド作石先生はあえて無音にすることで、コユキのボーカルを視聴者それぞれに想像してもらうようにしたのだと思われます。原作を愛するがゆえに雰囲気を壊さないための、批判を覚悟した苦肉の策だったと言えるでしょう。どう判断するかは視聴者の自由ですが、映画スタッフの原作への配慮、愛情というものは感じられる気がします。point 354 | 1
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様々な相違点がありましたが、映画スタッフは登場人物の使用する楽器も原作に忠実に再現し、野外ライブのシーンでは実際のロックフェスティバルの会場を借りた大掛かりなセットを制作しました。小道具や衣装も原作に忠実に再現し、ないものは本当に作るなど細かい部分までこだわった作品となっています。漫画を実写化する際にはキャスティングが合わない、設定やストーリーが変わっていると原作のファンの人から苦情が出ることも多いです。しかしbeckはできるだけ細部まで原作に忠実にこだわろうとしたスタッフの熱意が感じられます。時間などの都合で多少設定やストーリーは異なっていますが、なんとか原作のファンの期待を裏切らない作品にしようとする姿勢は評価すべきでしょう。賛否両論はありますが、映画版も原作と同様楽しめる作品になっていることは間違いありません。point 434 | 1