「盗撮」の抜け穴?プライベート空間の盗撮被害が深刻
全国の自治体は盗撮行為を処罰する迷惑行為防止条例を定めていますが、主に駅や電車など「公共の場所」での盗撮が取り締まりの対象で、プライベート空間は条例の「抜け穴」になっています。そのため スマートフォンの普及に伴い、住居内などプライベート空間における盗撮被害が深刻化しているといいます。
専門家からは「『盗撮罪』を創設するなど、法整備が必要だ」との声が上がる中、京都府をはじめ、各地の自治体が同条例を改正して規制強化に乗り出しています。
ネット上に盗撮データー流出など二次被害も懸念
近年、スマホや小型カメラが普及したため、盗撮の手口も多様化しているようです。インターネット上に盗撮データが流出するなど、二次被害も懸念されます。
「まさか自分の裸が隠し撮りされているとは思わなかった」。IT業界で働く京都市の30代女性が取材に応じ、戸惑いを語りました。
4年前、同僚男性と飲食を共にした時に 大切な仕事を終えた達成感と疲労から酒に酔い、翌朝、目が覚めると男性宅にいたといいます。
女性に記憶はほとんどなかったが、昨年、男性宅で盗撮された裸の画像データが会社の共有フォルダーに保存されていたことが判明したというのです。しかも 社員や一部の取引先も閲覧できる状態だったといいます。
女性は警察に被害を相談したが、住居内での盗撮は立件できないと言われたといいます。その後、民事裁判で 盗撮データを消去することなどを条件に男性と和解したものの、女性は「データが流出したらどうしよう、と今もおびえながら生活している」と苦しい胸の内を明かしました。
全国で取り締まれるよう、法整備を検討すべき
京都府警によると、住居や宿泊施設の客室などプライベート空間での盗撮は増加傾向にあるとのこと。公共の空間を処罰対象とする現行条例では 立件できないため、科料などの軽微な処分となる軽犯罪法を適用してきたといいます。
このため、京都府を含む各地の自治体で条例を見直し、処罰対象をプライベート空間にまで広げる動きが相次いでいます。
ただ、自治体ごとの規制にばらつきが生じれば、被害に遭った地域によっては条例で処罰できないケースが出てくるといわれています。
「被害者の精神的なショックは大きく、声を上げることもつらい。卑劣な犯罪を全国一律に取り締まれるよう、法整備を検討すべきだ」と性犯罪に詳しい吉田容子弁護士(京都弁護士会)は指摘します。
条例改正、処罰対象へ、被害抑止を目指す 京都府
プライベート空間における盗撮行為を取り締まるため、京都府は迷惑行為防止条例を改正し、来年 1月に施行するという。
現行条例では「公共の場所や乗り物」と「公衆の目に触れるような場所」での盗撮しか取り締まれなかったが、対象を広げることで被害抑止を目指します。
新たに処罰対象にするのは、住居や宿泊施設の客室での盗撮。
主にトイレや風呂、更衣室など、裸や下着姿でいるような場所を想定しています。教室や事務所、タクシーに加え、カラオケボックスやインターネットカフェの個室など「不特定または多数」が利用する場所も取り締まります。
また、盗撮目的で 撮影機器を向けたり、設置したりする行為自体も新たに禁止する他、スマートフォンに搭載されているデータ通信機能を悪用し、周囲の人にわいせつな画像を送り付ける行為も処罰します。同条例の改正は2014年以来。府議会 12月定例会で可決され、来年1月18日に 施行することになります。
法整備に加え 被害抑止教育の強化が不可欠
「条例の内容を巧妙化する盗撮の手口や被害の実態に合わせることで、少しでも被害抑止につなげたい」と 府警人身安全対策課の石塚宏亘次席は話しています。
全国一律に取り締まるための 法整備の検討に加えて、まずは「盗撮」が 犯罪であることを 認識させる教育の強化が不可欠であると思われます。