缶ビール1本程度の適度な飲酒が、心臓の冠動脈疾患のリスクを下げるという研究報告はいくつかあるが、それはある種の遺伝子変異を持っている人に限られるようだと、スウェーデンの研究で明らかになりました。
飲酒の心血管病予防効果
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研究チームは、心筋梗塞の患者618名と健康な人2,921名を対象に、日々の飲酒習慣とある遺伝子の突然変異が、心筋梗塞の発症にどのように関与しているかを調査することにしました。その遺伝子(CETP TaqlB)はコレステリルエステル転移たんぱく質を作るものであり、飲酒の健康効果に関与することがすでに報告されていたそうです。参加者は、飲酒量に応じて(1)飲まない、(2)低、(3)中、(4)高の4段階に群分けされました。心筋梗塞のリスクと飲酒量の関係について統計的に解析したところ、適度の飲酒者(3)は、低い飲酒者(2)に比べて、心筋梗塞のリスクが、35%低下することが明らかになりました。
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さらに、くだんの遺伝子変異(CETP TaqlB B2)を持つ人で同様にリスクを計算したところ、なんと心筋梗塞のリスクは80%も低下することが明らかになり、この効果は特に男性で強く見られましたが、女性にも同じように認めらました。この効果は、飲酒以外の生活習慣や社会経済状態、血清HDL-コレステロール値などの影響を除外してもみられたそうです。この特殊な遺伝子変異は、全人口の15%にしか存在しません。別の言い方をすると、適度の飲酒が予防効果を示すのは、全体の15%の人たちに過ぎないのです。
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今回の結果を簡単にまとめて考慮すると、世界中で用いられている適度な飲酒についてのアドバイスは、一般化するには程遠い、と研究チームは指摘しています。研究者は、「適度な飲酒だけでは十分な予防効果は得られません」とし、「また、この遺伝子型を持っているというだけでも効果はないのです。両方が組み合わさった時にはじめて冠動脈疾患のリスクは顕著に低下するのです。」と述べました。
仕組みは依然として不明
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この遺伝子変異型は、CETP(コレステリルエステル転移たんぱく質)と呼ばれるたんぱく質に関するものであり、このたんぱく質はHDL-コレステロール、つまり心臓保護効果をもつといわれている善玉コレステロールに影響を与えることがわかっています。そこで、ひとつの仮説として、アルコールが変異のあるCETPに作用することでHDL-コレステロールの効果が高まることが考えられるそうです。もう一つの仮説としては、アルコール飲料に含まれる健康によい抗酸化物質が作用しているというものです。研究チームでは、二つの仮説のうちどちらかが正しいだろうと信じているというが、残念なことにどちらの仮説も、それが具体的にどのような仕組みであるかは全く不明のままなのです。
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今回の研究結果が正しい方向へと導く手がかりになるだろうが、今後さらに研究が必要だといえるでしょう。どのように働くかが明らかになれば、幸運な15%にだれが含まれるのかを遺伝子検査で見つけるのは簡単なことですから、飲酒に関するアドバイスをもっと有効に活用できるようになるでしょう。しかし、最も重要なのは、冠動脈疾患を予防するための新たな身体の仕組みを明らかにすることです。
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