29日、体操女子リオ五輪代表である宮川紗江選手は都内で会見を開きました。
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その発端は、宮川選手へ指導している時の暴力行為で、日本体操協会が速見佑斗コーチに無期限登録抹消処分を科したことでした。しかし、これに関して宮川選手は文書で反論をしています。暴力があった事実は認めた上、「(1年以上前の)暴力のことを使って、私とコーチを引き離そうとしているのではと考えている」、「何日も自分の気持ちと向き合ってきた。嘘偽りなく話します」と宮川選手が宣言しました。そして、常にその中心に君臨していたのが「朝日生命体操クラブ」監督を務める、塚原千恵子女子強化本部長でした。
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宮川選手によると、ナショナルトレーニングセンター(NTC)の代表合宿中だった今年7月、塚原強化本部長とその夫の塚原光男体操協会副会長に呼び出され、本部長から速見コーチの暴力行為を認めるようにと言われたそうです。
宮川選手が否定を続けると、副会長は、「除外されたら困るのは、あなた。今すぐ(コーチとの)関係を切りなさい」と迫られたそうです。また、本部長からも「暴力を認めないと、あなたが厳しくなる。あのコーチはダメ。だから伸びないの。私は速見より100倍よく教えられる」と強く言われたそうです。
それでも宮川選手が「家族と先生(速見コーチ)を信頼して一緒にやっていく」と言うと、本部長から、「家族でどうかしている。宗教みたい」と高圧的になり、2時間に及ぶ説得の中、「五輪に出られなくなるのよ」と脅かされたそうです。
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体操関係者の話によると、
「その後、宮川選手は塚原本部長の付き人から朝日生命体操クラブへの加入を勧められたと言っていましたが、これは塚原本部長の常套手段です。朝日生命は自力で選手を育てる力が乏しく、他のクラブで実力をつけてきた選手を獲得する手法でクラブを強化してきた。代表合宿に呼ばれた有望選手に『うちの方がうまくなる』『あのコーチはダメ』と声をかけて勧誘する手口は業界内で有名です。リオ代表の宮川選手も東京五輪の有望株。高校卒業をきっかけに、朝日生命へ入れようと画策したフシがある。宮川選手と速見コーチの所属先で、今回の一件で2人を解雇した『株式会社レインボー』は当初、塚原本部長と無関係だったが、徐々に塚原夫妻に取り込まれていったと聞いています」
今回と似した事件は以前にもありました。
2013年、当時は「羽衣体操クラブ」の井岡淑子コーチが指導している中に女子選手2人に暴行したことで傷害容疑で書類送検されました。1人は10年に階段から突き落とされて、もう1人は11年に髪を掴んで振り回され、鼻を骨折させたそうです。よって、井岡氏は2015年に無期限登録抹消処分になりました。
前出の体操関係者によると、
「井岡コーチの場合、今回の件と違って本当に暴力がヒドかった。被害者選手の親が助けを求めたことで発覚、妥当な処分といわれました。けれども事件には裏があった。当時、『羽衣体操クラブ』で井岡コーチが教えていた選手の中に杉原愛子という選手がいました。現在、朝日生命に所属する代表候補選手です。コーチの不祥事を機に、『それならうちで練習しなさい』と本部長側が声をかけ、朝日生命に引き取られる形で移籍している。つまり、塚原本部長は事件を利用して有望選手の引き抜きに成功したことになるのです」
宮川選手は会見でこう話していました。
「代表選手を追い抜いて海外派遣を受けたり、ナショナル選手より上の立ち位置で優遇される。トライアウトを受けて、強化本部長に許可されると(「2020」に)なれるが、すごく不透明。詳しく調べてもらいたい」
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宮川選手の告発から1時間半後に体操協会が会見を行い、山本専務理事によると、「たとえ五輪のためだったとしても暴力は断じて許さない。暴力の根絶を徹底していきたい」と強調しました。
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「朝日生命の選手や出身者が被害者です。試合中にもかかわらず選手を陰に連れていってビンタしている現場は複数の人に目撃されている。昔はもっとヒドかった。演技に失敗して頭から落ちて脳震とうを起こしている選手を、心配するどころか裏でボコボコにしていたという話まであるほど。そういった暴力指導を看過していたというのです。国際大会だったので、海外の選手は『日本のコーチはクレージーだ』と目を白黒させていました」
「朝日生命の試合に出場できるかどうか瀬戸際の選手の親は、塚原夫妻への付け届けが必須だといいます。中身によって優遇されたり、渡さなければ出場の可能性が低くなるともっぱら。お中元やお歳暮を贈ったら、気に入らなかったのか、送り返された人もいるそうです」(前出の関係者)