日本の漫画の長い歴史の中でSF漫画の古典的名作として有名な作品の一つが、1963年から1965年にかけて週刊少年マガジンで連載され、テレビアニメにもなって大きな人気を博した8マンです。大人でも楽しめるような硬派でシリアスなストーリー、深みのあるキャラクター描写、シャープでかっこいい絵柄など、8マンは現在でも十分通用する魅力が色々と持った作品だと言えます。しかしこの作品には、実は呪われているという噂があるのです。
二人の関係者が刑事事件を起こしてしまった
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8マンが呪われていると言われる理由の一つが、関係者の中から刑事事件を起こしてしまった人が二人出ていることです。
一人目は漫画の作画を担当していた桑田次郎(現在は桑田二郎)で、その事件は拳銃を所持していたことによる銃刀法違反でした。
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実は彼には誰かを傷付けようという意図があったわけではなく、若い頃からの自殺願望を満たすために拳銃を持っていたのです。
彼の描くシャープできれいな絵柄は8マンという作品の大きな特徴だったのですが、その人の逮捕がきっかけで漫画の連載が打ち切りになったことは、日本の漫画史上に残る名作としてはあまりにも皮肉で残念な結末だと言えるでしょう。
その連載の最終話は彼ではなくアシスタントが書いたのですが、その回が単行本に収録されることはありませんでした。後に完全版が発刊された時にその結末が桑田次郎自身の手によって描かれたのですが、彼の絵柄の変化によって違和感の残るラストになってしまいました。
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事件を起こした関係者の二人目は、アニメの主題歌を歌っていた克美しげるです。
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彼は8マンに関わってからしばらくすると、低迷期に入って借金を重ねてしまいます。ホステスをしていた愛人の女性に貢がせたお金で借金を払った彼は、その女性と結婚式を挙げたのですが、実は彼にはすでに妻子がいました。そして愛人が妻子の存在を知って怒り、マスコミに二人の関係をばらすと言ったため、当時カムバックを目指し
ていた彼はその愛人を殺害してしまいました。
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その事件が起こったのは1976年の5月で、8マンのアニメにもしばらくは再放送時に主題歌が流せないなどの影響が出ました。
実写映画化が失敗して出版社が倒産してしまった
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桑田次郎の逮捕によって不本意な形で連載が終了してしまった8マンが、平成に入ってから新たに脚光を浴びたことがありました。
リム出版という出版社が完全版という形で単行本を復刻し、しかも幻となってしまった最終話を桑田次郎が描くということで大きな話題を呼んだのです。
その完全版は大ヒットを記録したのですが、その後リム出版に起こった出来事が、8マンが呪われていると言われる理由の一つとなってしまいました。完全版で利益を得たリム出版が次に企画したのが8マンを実写映画化することで、それが大失敗に終わってしまったのです。
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その映画は主人公を宍戸開が演じ、彼の父親で往年の人気俳優だった宍戸錠も出演していたのですが、
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その現場の状況は宍戸錠が自分の長い俳優人生で初めてと語るほどひどいものだったようです。
その作品はあまり映画に慣れていない人たちによって製作され、ストーリー・演出・俳優の演技・撮影技術といった映画の基本的な部分に色々と問題が目立ち、また肝心の8マンのデザインも原作とは違ってかっこ悪いといったように、誰が見ても失敗と言える作品だったのです。
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その映画の上映イベントを東京ドームを借り切って大々的に行ったものの、場内はガラガラでした。そしてこの映画が興行的に大コケしたことが原因となり、リム出版は倒産してしまいました。
まとめ
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このように8マンという漫画には、二人の関係者の逮捕、実写映画化の失敗とそれが原因となった出版社の倒産といったように、呪われていると言われるだけのトラブルがいくつも起こっています。しかし、そのことにより8マンの作品としての価値が落ちてしまっているかと言うと、実は決してそうではありません。
SF小説の大家である平井和正による完成度の高いストーリーと、優れた技術を持った漫画家の桑田次郎による見事な絵がマッチした8マンは、連載開始から五十年以上が経った現在でも根強いファンのいる人気作品なのです。