今年4月、東京都豊島区東池袋で旧通産省工業技術院の元院長・飯塚幸三容疑者(88)が運転する乗用車が暴走。
松永真菜さん(31)と長女・莉子ちゃん(3)の尊い命が奪われるほか、複数の負傷者を出した池袋暴走事故。
これをはじめ、高齢者による交通事故が相次ぐ中、運転免許を自主返納する人も増えています。
一方で、「免許返納」を拒絶する高齢者も。
本人が自主的に返納してくれば良いが、本人が「まだ運転する」と主張するために、
頭をかかえる家族も少なくないようです。
普段、交通事故も扱う弁護士の女性(20代)は、広島県福山市で暮らす母方の祖母(70代)が2019年、
免許を返納したことでホッと胸をなでおろしました。
祖父(80代)も、免許の返納はしていないものの車を手放したといいます。
弁護士の女性は、「車には主に祖父が乗っていました。祖父は夏に病気で入院したこともあり、『若いときとは違う』と車を手放す決意をしたようです。祖母はもともと車に苦手意識があったものの、免許を身分証がわりに持っていました。今年になって『無理』と判断し、返納したようです。報道も気にしていましたね」と話します。point 160 | 1
しかし、中には免許を返納しないと固く決意している人たちもいるようです。
この弁護士によりますと、岡山県で暮らす父方の祖父は70を過ぎているが、
「絶対に返納しない」と断言しているというのです。
祖父は1人1台車を持っている地域に住んでおり、
「免許を取られたら生きていけない」と話しているといいます。
ほかにも、都内在住の主婦J子さん(40代)の夫の両親は70を過ぎた高齢者であるが、
今もなお、免許を返納せずに乗用車を運転しているといいます。
「車はいつまで乗るんですか?と、先日も聞いたばかりなのですが『車がないと生活できない。自転車は危ないから乗りたくない。絶対に、車は手放せない』と言うので、驚きましたね」
とJ子さんはため息をつきます。
「少し歩けばバスも通っていますし、車の維持費を考えれば、車が必要な時はタクシーを利用すればいいだけの話だと思うんですが。そもそも、車がないと生きていけない土地で暮らし続けることなんて無理です。まさか私たちが同居してドライバーになることをあてにされているんでしょうか。いつか夫の両親が事故を起こし、犠牲者をうむのではないかと心配でたまりません」point 246 | 1
今年も高齢者による事故はたくさん起こりました。
社会化問題になりつつある高齢ドライバーの事故ですが、
「運転免許統計」(警察庁)の発表によりますと、
2018年に運転免許を自主的に返納した件数は42万1190件。
このうち、65歳以上の高齢者は40万6517件(96.5%)、
75歳以上は29万2089件(69.3%)となっています。
2009年には5万件に満たなかった件数は、この10年で大きく伸びています。
背景には、高齢ドライバーによる死亡事故、逆走などが報じられたことで、
本人や家族が危機感を抱くようになったことがあるでしょう。
その一方で、運転免許がないと生活に「不便になる」「身分証がなくなる」などの理由が挙げられ、
運転免許を「返納したくない」と考えている高齢ドライバーも少なくありません。
また、田舎暮らしをしている人からしてみれば、
「実家はスーパーまで車で15分かかる場所にある。強制返納になれば、親はどこにも行けなくなる」
「高齢者にとって車は生活の必需品」などと返納に反対する意見は根強い様子。
高齢ドライバーによる死亡事故が多発する中、
一概に「自主返納をするべき」と言っても、限界はあるでしょうね。
しかし、加齢による身体機能の低下などから事故のリスクが高まることは確かなのです。
全国で相次いで発生している高齢ドライバーによる悲惨な交通事故。
今後も、国では高齢者らに自主返納を促すとともに、
過疎地域での交通手段の確保に向けた議論も同時並行で進めていかなくてはなりませんね。
少しでも、高齢ドライバーによる事故が減ってほしいと願うばかりです。