参院予算委員会の締めくくり質疑が27日午前9時から開かれました。東京五輪の延期決定後、安倍晋三首相が初めて国会で答弁。東京都の外出自粛要請などをめぐっても論戦がかわされました。
最優先の課題は治療薬の研究開発
安倍首相は参院予算委員会の前に、首相官邸で健康・医療戦略推進本部に出席。あいさつで「人類全体の脅威になっている新型コロナウイルス感染症の治療薬、ワクチン等の研究開発も、最優先の課題として全力で取り組んでいく」と述べました。
基本方針について議論
新型コロナウイルスに対応するための改正新型インフルエンザ等対策特別措置法を担当する西村康稔経済再生相は参院予算委員会の前、国会内で記者会見をしました。
西村経済再生相は「諮問委員会」を開く予定であることを明らかにし、同委員会に関し「今後の基本方針について議論いただく。専門家の意見を聞きながら、今の状況をしっかりと踏まえながら、今後の対処方針を考えていきたい」と述べました。
強大な経済財政政策
参院予算委員会で安倍首相は新型コロナウイルスの感染拡大による日本経済の冷え込みについて「甚大な影響を及ぼしている」との認識を示しました。
その上で「このマグニチュードに見合うだけの必要かつ十分な強大な経済財政政策を講じていかなければならない」と強調。
さらに「現在は感染拡大の防止の徹底に加え、雇用維持と事業の継続を最優先に全力をあげて取り組んでいる」と説明しました。
近く策定する見通しの経済対策について、「前例にとらわれることなく、一気呵成(かせい)に思い切った措置を講じ、日本経済を再び確かな成長軌道へとV字回復させていきたい」と自民党の滝沢求氏への答弁としました。
五輪延期「1年程度」の理由
立憲民主党の石橋通宏氏の質問で、五輪延期が「1年程度」となった理由については、「(新型コロナウイルスの)世界の感染の広がりを勘案すると、数カ月程度の延期では困難。他方、2年の延期となれば、東京大会へのモメンタム(勢い)が失われて、別の大会のようになる」と答弁した安倍首相。
石橋氏から「来年秋ではダメなのか」と問われると、首相は「バッハ(IOC)会長から遅くとも2021年夏までと言われ、私も同意した」と述べました。
感染拡大の分かれ道
東京都の小池百合子都知事が新型コロナウイルスの感染拡大で「重大局面」を宣言。週末の外出自粛などを要請した対応をめぐり、安倍首相は「小池都知事と同じ危機感を持って対応していきたい」と立憲民主党の石橋通宏氏へ答弁。
政府の専門家会議座長の脇田隆字・国立感染症研究所長も同委で「まさにオーバーシュート、爆発的な感染拡大が起こるかどうかという今、分かれ道にあると認識している。しっかり対策していくこと。今はこれが大事だと思っている」と述べました。
首相は現在の国内の感染状況について、「新規の感染者数が都市部を中心に増加し、感染源が不明な感染者も増加しており、海外からの移入が疑われる事例も多数報告されている」と説明。
続けて、「多数の人口を抱え、経済の中心でもある東京を含む首都圏で急速な感染拡大を回避することは極めて重要。仮にロックダウン(都市の封鎖)のような事態を招けば、わが国経済にもさらに甚大な影響を及ぼす」との危機感も。
‟緊急事態宣言”現時点では要件満たさず
次に、西村経済再生相は感染拡大に伴う緊急事態宣言の可能性について、現時点での認識を示しました。
2要件の一つである「全国的かつ急速な蔓延(まんえん)により国民生活および国民経済に甚大な影響を及ぼすなどの事態」には当てはまらないとの考えを表明、‟緊急事態宣言”現時点では要件満たさないとしました。
もう一つの「国民の生命および健康に著しく重大な被害を与える恐れが発生」については、当てはまる可能性があるとしました。
改正特措法では2要件が両方当てはまる場合に緊急事態宣言を出せますが、要件を満たすかどうかは専門家でつくる「基本的対処方針等諮問委員会」の意見を踏まえて判断するとしています。
26日、政府は特措法に基づく「政府対策本部」を設置。私権を制限できる緊急事態宣言を出すことが可能になりました。
雇用、所得が急激に悪化
西村康稔経済再生相は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で3月の月例経済報告から「回復」との文言が6年9カ月ぶりに削除されたことについて、「求人が減少しており、これまで非常によかった雇用、所得の環境も急速に悪化している」との認識を示しました。
加藤勝信厚生労働相は解雇や雇用調整の動向について、「全部を網羅的にみているわけではないが、聞き取りでは特に宿泊、観光、運送といった事業を中心に出てきている」と説明。
「解雇などの見込みの労働者数は888人、解雇調整の可能性がある事業所は3233だ」と述べました。