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日本語版「アナと雪の女王」は英語版と全く別物?その理由は?


ディズニー映画「アナと雪の女王(原題Frozen)」は世界中で大ヒットを記録したお話で、2014年に日本でも公開されるやいなや、すばらしい主題歌と劇中歌などの要素によって空前のヒットとなりました。世界中でさまざまな言語に吹き替えがなされているわけですが、日本語版「アナと雪の女王」は、実は元祖の英語版とは主題は一緒でも、主旨が全く別のものになっていると言われています。これらは文化や言語の違いにより、全体的に自然に見えるようにするためとされています。

写真:prtimes.jp

◼︎「let it go」の解釈の違い

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写真:youtube.com

日本では主題歌「let it go」が「ありのままで」と訳され、閉ざされた雪山でエルサが「自分らしく生きること」と伸びやかに歌い上げているシーンが印象的です。しかし英語版では「心を閉ざしたまま一人では生きられない、もう成り行きに任せよう」という心の葛藤を表しています。この「let it go」の解釈の違いが作品全体に与える影響は小さいものではありませんが、全くの別物とも言えず繋がる部分もあります。同じアニメーションの絵をバックに、エルサが自分の現実をどのように見、捉えているかの違いになります。
英語版におけるこのシーンでの焦点はエルサの「it=秘められたパワー」に当てられ、個人主義でその人の内面を重視するという欧米文化を象徴しているものです。一方、日本語版では周りからの評価や中傷が基準となっていて、それに対して自分は「ありのままに」存在していて良い、というところに焦点を絞っています。これは、島国でおおよそ単一民族国家と言われる、集団の中での自分という日本独特の文化を象徴しています。日本語に訳す際には、それを見る日本人の背景にある文化をも組み入れつつ、作品の世界観を壊さずに内容と融合させる必要があります。また、アニメーションの口の動きにも合わせて自然に見えるようにする必要性も加味すると、この「アナと雪の女王」日本語版での翻訳はすばらしいものと言えます。point 593 | 1

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写真:disneynohimitsu.com

◼︎原題「Frozen」と姉妹の役割の捉えの違い

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写真:usedoor.jp

ディスニー映画では初のダブルプリンセスの物語としても注目された「アナと雪の女王」は、その通りに姉妹の物語です。原題「Frozen」では一切そのことに関して触れず、物語のキーとなるエルサの秘めたパワーのことを表しています。日本語版では邦題において姉妹をしっかりと前面に押し出しています。このように、題名を見ただけで作品の第一印象がそれぞれ違ってきます。
作品の中で二人の小さな頃のエピソードがいくつかありますが、長女のエルサはしっかりもの、次女のアナは無邪気で自分の思うままに行動するという、日本で一般的に言われる姉妹の上下における役割を強調するような日本語訳になっていることで、日本文化の性質に寄せていることが分かります。英語版を見る欧米の人々の文化では、兄弟姉妹は日本ほど上下関係を重要視せずにお互いに個人として対等な立場を保つのが一般的です。エルサの責任感ある行動は、彼女の秘めたパワーに対する戸惑いと、それを隠し通しなさいという両親からの言いつけに悩む気持ちから出来上がった性格だと言えます。本来はそこに姉妹の要素は絡んできていませんが、日本語訳のセリフのところどころで、「シスター=姉、妹」と置き換えられていることからも、日本版では姉妹それぞれの役割分担を強調しているかのような印象が大きいです。point 564 | 1

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写真:disney.animepopn.com

◼︎まとめ

言語も文化も違う世界中の人々に一つの同じ作品を公開するためには、それぞれの文化や言語表現の仕方でも工夫が必要となりますので、「アナと雪の女王」に限らずその他多くの映画においても、テーマにおいて少々ニュアンスが違ってくる場合は少なくありません。また、それぞれの文化において受け入れられる要素が主題歌であったり、テーマであったりと違うのも当然ですが、それでもこれほどの世界的大ヒットとなった「アナと雪の女王」は、それぞれの言語翻訳において大成功を収めたことを表していると言えるでしょう。point 319 | 1

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