ある水上タクシーの運転手が日本のテレビ局のクルーの乗船を拒否したことが大きな話題を呼んでいます。
その取材陣たちの行き先が、ヘンリー王子とメーガン妃の住まいがあるとされるカナダ・バンクーバー島だったからなのです。
この水上タクシー運転手は、テレビ局クルーを乗せていれば相当の料金を受け取れていたはずですが、運転手はヘンリー王子とメーガン妃のプライバシーには釣り合わないと考えて乗車拒否をしました。
カナダの法律専門家によると、同国のブリティッシュ・コロンビア州にはプライバシーの侵害から個人を守る法律があるものの、王室に適用されたことはなく、「新たな領域だ」といいます。
カナダ・ブリティッシュコロンビア州の水上タクシー運転手である、マイルス・アルセノー氏は、1月23日(現地時間)、カナダ公共放送のラジオ番組に出演し、ヘンリー王子とメーガン妃の住まいがあるとされる場所に向かおうとした日本のテレビ局クルーの乗船を拒否したことを明らかにしました。
アルセノー氏は、元カメラマンで、半年前にブリティッシュコロンビア州ノースサーニッチで水上タクシー会社を立ち上げたばかり。
同州のバンクーバー島には、イギリス王室からの離脱を発表したヘンリー王子とメーガン妃が越してくると言われています。
アルセノーはラジオ番組で、日本のテレビ局クルーが乗せてほしいと言ってきたとき、最初は何の疑いも抱かなかったと話しました。
「実際のところ、ものすごく興奮したよ。電話を鳴らして船に乗せてほしいってことは、つまり銀行口座に金が入るってことだからね」
マリーナで取材クルーたちと初めて顔を合わせたとき、アルセノー氏は彼らの渡航先がヘンリー王子とメーガン妃に何か関係あるのかたずねました。
「そのときはヘンリー王子とメーガン妃の住まいがあるなんて全然知らなかったんだ。でも、話してみると彼らはあっさりそのことを認めた。だから言ったんだ。『他の水上タクシーをあたってくれないか』と」
アルセノー氏はカメラマンの経験が長く、レポーターやジャーナリストたちがネタとなる写真を撮影するための距離感がよく分かっていました。それでも、彼は取材クルーを船に乗せようとはしませんでした。
「もちろん、分かっていたよ。『決定的瞬間』を押さえたいんだ。レポーターもカメラマンも食い扶持を稼がないと生きていけない。でも、そいつをウチの船を使ってやるのは御免だ、ってことさ」
水上ボートの乗船料金は、2時間200ドル(約3万3000円)。アルセノー氏にとって、ヘンリー王子とメーガン妃のプライバシーをさらすのには釣り合わない金額だったといいます。
アルセノー氏はラジオ番組で、ヘンリー王子とメーガン妃についてこう語りました。
「カナダ国民はスーパーのレジを待つ列で世間話をするとか、そんな普通のつき合いがしたいと思ってるんじゃないかな。特別なことは何も望んじゃいない。ふたりが新たな生活を最高の形で送ってほしい、それだけだと思うよ」
専門家の多くは、ヘンリー王子とメーガン妃がバンクーバー島に引っ越してくれば、カナダの裁判所にとっては、(民間にも王室にもほとんど適用されてこなかった)プライバシー保護関連の法律の運用を重点的に考える初の機会になるとみています。
ヘンリー王子とメーガン妃の事例は、カナダのプライバシー保護法とメディア法の双方にとって未知の領域なのです。