保釈中だった日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(65)が、先月30日にレバノンに逃亡したことが明らかになりました。
カルロス・ゴーン被告が秘密裏に中東のレバノンに出国していた問題については、欧米の複数のメディアは計画が数週間前から周到に準備され、妻のキャロルさんが重要な役割を担ったと伝えました。
楽器の箱に隠れ 地方空港から日本出国?
日産自動車のゴーン前会長は、みずからの報酬を有価証券報告書に少なく記載した罪などで起訴され、保釈中は海外への渡航が禁じられていましたが、日本を秘密裏に出て 先月30日にレバノンに入国していたことが明らかになりました。
これについて欧米の複数のメディアは、計画が数週間前から周到に準備されたものだったと伝えています。
「集められたチームは、先週末に計画を実行し、ゴーン元会長は監視下に置かれた都内の住居から連れ出されてプライベートジェットでトルコに向かった。さらに飛行機でレバノンに向かい、そこで作戦の主要な役割を担った妻のキャロルさんと落ち合った」
とアメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、計画に関わった人物の話として、報じています。
また、フランスの有力紙ルモンドは情報筋の話として、キャロルさんが、トルコと良好な関係を持つ異父兄弟と準備を進めた可能性が高いと伝えました。
また レバノンのメディアは 先月31日、日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告が日本を秘密裏に出国した際、「警備会社の助けを得て、楽器の箱に身を隠していた」と報じました。
現地のテレビ局MTVによると、日本のゴーン被告の滞在先で夜にパーティーが開催され、楽器が持ち込まれたそうです。会の終了と共に楽器が持ち出されたが、その際、楽器を入れた箱の中にゴーン被告も隠れていたとか。また、同テレビはゴーン被告が「日本の地方空港から出国した」と伝えています。
海外への渡航が禁じられるなか、出国審査をどうくぐり抜けたのか。刑事裁判の行方はどうなるのか? 衝撃が広がっています。
異例保釈が 大変な結果に…
検察、弁護側は19年10月中旬までに、金融商品取引法違反事件をめぐる主張を大まかにまとめており、4月下旬にも東京地裁で初公判が開かれる予定でした。しかし、レバノン側が前会長の身柄の引き渡しに応じなければ、裁判は実現しない可能性が極めて高いと言えます。
前会長は18年11月から19年1月までに金融商品取引法違反などの罪で計3回逮捕・起訴され、同年3月にいったん保釈。4月に会社法違反容疑で4回目の逮捕があったが、起訴直後に保釈されました。前会長が否認し、裁判の争点も明確化していない段階で 保釈が認められるのは異例でした。
日本の刑事司法については、罪を認めないと身体拘束が長引く「人質司法」だと海外から批判されてきました。
ただ近年は改善の兆しもみられ、最高裁によると、保釈請求が一審判決までに認められる率は、00年に47・7%だったのが、18年は69・2%に上昇しました。前会長の保釈もこうした流れのなかにありました。point 212 | 1
ところが その結果として ゴーン前会長は 海外に逃亡してしまったのですから、住居に監視カメラを設置したり、弁護人が旅券を保管したりといった保釈条件は まったく歯止めにならなかったということになります。
「保釈したのが明らかな間違いだった。大変な結果になった」と ある検察幹部は語りました。
ゴーン前会長の引き渡しが実現する見通しは?
前会長カルロス・ゴーン被告が日本を出国し レバノン入りしたことについて、保釈中にレバノンに渡航した問題で、レバノン政府は 去る12月31日、同被告は合法的に入国したと発表しました。
「彼(ゴーン被告)は合法的に入国し、彼に対する令状発行や起訴の手続きは行われていない」とレバノン公安総局は発表。レバノン外務省も、ゴーン被告は30日の夜明けに「合法的」に入国したと言明したとのことです。
日本は、レバノンと容疑者の身柄の引き渡しに関する条約を結んでおらず、今後は 外交ルートを通じて 引き渡しを求めていくとみられます。ただレバノンでは 国内法で、自国民を他国に引き渡さないことを規定しており、引き渡しが実現する見通しは 現時点では 殆どないと思われているようです。