狭いゲージの中に入れられ、その命に値段を付けられた光景を見ていられないから ペットショップが苦手だという 大阪市のTさん。
しかし、引越し先の近所には小さなスーパーしかなく、一緒に暮らす保護猫のフードが売っていなかったそうです。
やむなく入店したペットショップで、Tさんは少し大きくなったアメリカンショートヘアーと目があいました。「値下げ!79800円」というシールの影で座っている子猫。生後2~3ヶ月の子猫たちの並びの中で、その子は随分大きく見えましたが…
1ヶ月後、そのガラスケースには「さらに値下げ!59800円」のシールが。その後もシールは上から重ねて貼られ続け、3カ月後には「最終値下げ!39800円」と書かれた真っ赤なシールが貼られていました。小さなガラスケースにベタベタと貼られたシールのせいで、その子の姿はほとんど見えないほど。Tさんは「最終値下げのその先はどうなるの?」と、後ろ髪を引かれる思いで店を出ました。point 241 | 1
その光景が頭から離れず「家族」に
「マンション暮らしで、金太郎と桜という保護猫2匹と暮らしていましたから、これ以上は…と相当悩みました。でも、あの光景を思い出すと胸が締め付けられて…」 帰宅してからもその光景が頭から離れず、家族に迎え入れるかどうか悩んだTさん。
その日の営業終了直前の時間帯に、Tさんはペットショップを再訪。暑い夏の夜に、レオくんはT家の家族になりました。
広い場所が落ち着かないのか、レオくんは数日間、ベッドの下からまったく出てきませんでした。少し慣れて、高橋さんの前でトイレができるようになってからも、頭を撫でようと手を差し出すと、怯えるように身体がビクッと震えたりも…ペットショップで人嫌いになったのかもしれないと思い、無理に触らず、そっと見守る日々を過ごしたそうです。
心を癒した先住猫とは兄弟のように
そんなレオくんの心を癒したのは、先住猫の金太郎くんと桜ちゃん。実は金太郎くんも去勢手術以来の人嫌いで、ベッドの下を住処にしていました。性格も年齢も近い2匹はすぐに仲良くなり、「2匹なら怖くない!」とばかりにベッド下から出てくるように。
やんちゃな先輩猫の桜ちゃんは、2匹の前でおもちゃの遊び方を披露して見せました。そして、その年の冬を迎える頃には、桜ちゃん、金太郎くん、レオくんが、兄弟のように寄り添ってベッドの上で眠るように。
「怖がりになってしまった金太郎が 私と同じベッドで寝られるようになったのは間違いなくレオのおかげ。そして、レオが新しい家に早く慣れられたのは金太郎と桜のおかげなんです」point 243 | 1
あのとき決断して良かった…
その後、結婚を機に、ご主人の地元である愛媛県西条市に引っ越し、2階建ての新築住宅で暮らし始めたTさんと 3匹はいまも元気で、毎日階段で追いかけっこをしているという。
「狭いガラスケースに閉じ込められていたレオの姿を覚えているので、広い家で走り回っている姿を見ると、あのとき決断して良かったなって思います」
3匹は完全室内飼いだが、外に興味があるレオくんは 大きな掃き出し窓から外の田園風景を眺めるのが大好きだそうです。
「 迷子になってもいけないので出してはあげられません。でも、うちの窓ガラスには価格シールが貼られていませんから、外の風景もよく見えるはずですよ」