思わず人にオススメしたくなる胸キュン漫画といえば、山岸涼子作の「日出処の天子」です。これは、聖徳太子と蘇我蝦夷の交流を描いたフィクションで、聖徳太子が蘇我蝦夷を恋い慕い、蘇我蝦夷は聖徳太子に恋愛感情はないが、心配し続けるという物語です。聖徳太子が蘇我蝦夷をひたすらに恋い慕うさまに、胸キュンすることでしょう。同性愛ということとは関係なしに、凍えるような心をかかえながら、ひとりの相手をひたすら追い求める姿に胸キュンさせられます。
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「日出処の天子」は、ユーモアにあふれた作品で、コミカルな要素が強いです。読んでいて爆笑するような場面が随所に散りばめられています。絵も話の流れも淡々としているのですが、ところどころにそうしたユーモラスな場面が出てきて、楽しく読めます。そして、魑魅魍魎、権謀術数うずまく世界で怜悧に冷徹に動く聖徳太子が、赤子のような気持で求めてやまないのが、蘇我蝦夷であり、その場面になると、切なくなります。point 272 | 1
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しかし「日出処の天子」は、笑いあり涙あり、といった軽薄な物語でもありません。乾いたトーンで淡々と話しが進み、無機的な雰囲気をかもし出す漫画です。その中にあって、聖徳太子のむき出しのひたむきな、蘇我蝦夷に対する恋愛感情が描かれると、胸を打たれます。コントラストというのでもありません。たぶん、透明な感じがするからでしょう。
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聖徳太子は、超能力者として描かれています。超能力はあるのですが、達観しているというわけではなく、愛に飢えた子どもとしての心情をかかえています。聖徳太子が渇望する愛を与えてくれそうなのが、蘇我蝦夷であり、聖徳太子はそうと見込んだ蘇我蝦夷を一途に追い求めます。
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蘇我蝦夷は聖徳太子に見込まれただけあって、聖徳太子を恋愛対象としては見ないものの、聖徳太子の幸せを願い、心配をし、聖徳太子を傷つける存在に激しい怒りを持ったりします。乾いて愛に飢えた存在である聖徳太子に、蘇我蝦夷がそうした向き合いかたをするところも、胸を打ちます。
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日本史の勉強にもなります。この時代に関しては、歴史上の人物の名前を丸暗記するだけということにはならなくて済みます。フィクションではありますが、ある程度は史実に基づいていますので、この時代の流れやさまざまな出来事のいきさつなどが、つかみやすくなります。「日出処の天子」は漫画文庫となっています。全7巻ですが、読み終わるのが惜しまれるような、傑作です。point 246 | 1