運賃を払わずにキセル乗車したとして、大阪府警は9日会社員の男(51)を逮捕しました。
最近はあまり聞かなくなった”キセル乗車”。
“キセル乗車”の「キセル」とは、喫煙具の「煙管(きせる)」が由来しています。たばこは現在、刻んだ葉を紙で巻いたものが一般的ですが、昔は煙管を使って吸うのが主流でした。煙管は細い棒状で内部が空洞になっており、棒の一端にある「雁首(がんくび)」に刻みたばこを詰めて火をつけ、もう一端の「吸い口」から煙を吸います。通常、両端にある雁首と吸い口は金属を使用。そのあいだの「羅宇(らう)」と呼ばれる部分は、竹など金属以外の素材です。こうした煙管の構造が、不正乗車と結びつきました。point 280 | 1
不正乗車のひとつに「中間の運賃だけ払わない」というものがあります。A駅からB駅、C駅と経由してD駅まで移動するとき、「AからBまで」のきっぷと「CからDまで」のきっぷを用意。そして、A駅の改札は「AからBまで」のきっぷで入り、「CからDまで」のきっぷでD駅の改札を出る。
すなわちA~B間とC~D間、両端の運賃は払うものの、その中間は払わない、というものです。
この「両端の区間だけ運賃(お金)を払い、中間は運賃を払わない」という方法が、「両端だけ金」、つまり「両端だけ金属製」という煙管の構造に似ているということで、こういう不正乗車が「煙管乗り」「キセル乗車」と呼ばれるようになった、といわれています。そしていまでは、こうした「両端だけ金」の場合に限らず、鉄道の不正乗車全般を「キセル」と呼ぶようにもなったと言われています。
さて、今回この”キセル乗車”で鉄道営業法違反(無賃乗車)の疑いで大阪区検に書類送検された男。
実は、超大手企業、日立製作所子会社の情報通信会社「日立システムズ」(本社・東京都/奈良市在中)に勤務している社員だったのです。
しかも、「4年間キセルで通勤した」と、長年行っていたことを認めているといいます。
送検容疑は、今年7月23日午前、JR郡山駅(奈良県大和郡山市)から職場近くの北新地駅(大阪市北区)まで、正規運賃(710円)を払わずに乗車したことでした。
天満署によると、男は入場券(120円)で乗車し、下車する際に前を歩く乗客にぴったり付いて自動改札から出ていたそうです。約4年前から自宅と職場をキセルで往復し、定期代に換算した不正総額は約80万円に上るとされています。
警察の取り調べに対し、男は「遊ぶ金がほしかった」と供述しているとのことです。
51歳という年齢を考えれば、この男が管理職に就いている可能性は十分考えられます。こんな基本的なルールも守れない人間に、管理されている部下達が不憫でなりませんね。