俳優の火野正平が自転車に乗って全国を巡る番組である「こころ旅」は自転車に乗らない人からも好評を得ていて、人気番組になっています。この番組は視聴者からの手紙に記されている思い出の地までの道のりを火野昇平が自転車に乗って地元の人々との交流を重ねながら進むということをテーマにしていて、出発前と到着後に火野正平が朴訥とした語り口で読み上げる視聴者の手紙は感動を誘います。
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そんなこころ旅では、火野正平が乗っている自転車に注目が集まります。一般的なシティサイクルではなく、スポーツ自転車として知られるロードバイクに乗っていることは番組を見れば分かりますが、具体的な車種が放送されたことはありません。火野正平は番組が始まる前から自転車の愛好家で、番組の備品ではなく自分の自転車に乗っているのです。
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その車種は、「トマジーニ」というイタリアのブランドがリリースしているシンテージです。このブランドはイタリアのロードバイク選手だったトマジーニ氏が立ち上げたブランドで、イタリア国内の自社工場で生産を行っています。近年のロードバイクメーカーは台湾などコストを安く抑えられる国に発注することが多いですが、それでは画一的なフレームしか生まれないため自社生産という方針を曲げていないのです。
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さらに、車種であるシンテージはスチール製、ロードバイク業界ではクロモリと呼ばれる素材で作られています。クロモリはクロームモリブデン鋼の略で、鉄にクロームとモリブデンという素材を融合させたものです。ロードバイクの素材として多いのはアルミかカーボンが一般的ですが、アルミは安価ですが乗り味が堅く走行中に路面の凹凸を拾ってしまうためライダーに振動が多く伝わるというデメリットがあり、カーボンは軽く衝撃吸収性が高いものの乗り味が柔らかすぎてパワーが伝わらないというデメリットがあります。しかし、クロモリは衝撃吸収性の高さを持ちながらペダルを踏み込んだパワーをしっかりと伝えられるという特性を持っているのです。その分価格が高く重量も重いですが、玄人好みの素材だと言えます。ロードバイクがブームになる前からスポーツ自転車に乗っていた火野正平ならではのチョイスです。
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シンテージという車種はそんなクロモリという素材を使っていながらも剛性に重点を置き、自分のパワーをダイレクトに地面に伝えて前進できるように設計されているフレームです。この車種は30万円という価格ですが、実はフレームだけでその他の変速機やブレーキ、さらにはハンドルといったパーツ類は別に購入して組み付けなければなりません。そのため総額は40万円近い価格になっていると考えられます。高級自転車は購入しても実際に乗ることなく床の間に飾っておくいわゆる盆栽になってしまうことが珍しくありませんが、火野正平は実際に長い距離を走り、その魅力を十分に体験しているのです。
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また、火野正平は番組中でロードバイク乗りらしかぬファッションでロードバイクに乗っています。たとえば、スポーツ自転車に乗るときは義務ではないもののヘルメットの着用が推奨されています。アマチュアでも時速40kmを超える速度を出すことが出来るので、万が一の時に備えて自分の身を守る装備を身につけておくことが必要なのです。しかし、火野正平はヘルメットをかぶっていません。かといって完全に無防備なわけではなく、カスクという折りたたみが出来るヘッドギアを着用しています。これはヘルメットが普及する前のプロロードレースで用いられていたこともあり、安全性は折り紙付きです。ヘルメットはどうしても野暮ったい印象になってしまうため、火野正平はお洒落さと安全を両立できるカスクを愛用しているのです。