吴花燕(ウー・ファイエン)さんは、弟によると24歳。昨年10月に呼吸器障害で入院しました。身長135センチ、体重20キロほどの彼女の写真がメディアで取り上げられると、多くの国民が衝撃を受けました。
障害のある弟を支援するために1日2元(約30円)で5年間生活し、極度の栄養失調状態の中国の女子大学生であった彼女は昨年1月、死去しました。担当した医師によると、5年間にわたって最小限の食べ物しか取っていなかったため、心臓と腎臓に障害があったということです。
吴さんには、回復を願う寄付金が続々と届きましたが…
残念なことに 既に 健康を取り戻すことはできなかったのです!
中国メディアが伝えた内容ですが、貧富の差が拡大する同国で、貧困対策の乏しさを 批判する声が相次いでいました。
両親を亡くし 所持金の大半は弟の治療費に
吴さんの父親と祖母は、体調が悪化しても治療費が払えなかったために亡くなったといいます。
母親は吴さんが4歳のときに死去。父親が死んだのは、吴さんがまだ子どものころだったそうです。
両親を失い、吴さんと弟は 祖母の世話になりました。その後、おじとおばが毎月300元(約4800円)を支援してくれましたが…
そのお金のほとんどは、精神障害のある弟の治療費に消えました。
吴さんに残されたのは1日当たり2元だけ。5年間、主にトウガラシと米だけを食べていたそうです。担当した医師によると、吴さんはあまりに栄養不足で、毛髪の半分と 眉毛が抜け落ちていたということです。
吴さんは生前、支援を求めてメディアに登場しました。その理由については、「貧困が原因で死ぬのを待つのは いやだ」と、香港の英字紙 サウス・チャイナ・モーニングポストに話していたのです。
中国はいまや「世界有数の不平等な国」?
中国では、過去数十年で経済が飛躍的に成長した一方、貧困は無くなっていないとみられます。貧富の差は拡大しており、国際通貨基金(IMF)は2018年の報告書で、中国はいまや「世界有数の不平等な国」だとしました。
吴さんと弟は、中国で最貧レベルの州の1つ、貴州省の出身でした。そのことも相まって、吴さんの苦難が報じられると、同国の貧困問題に注目が集まりました。
同国の統計によると、2017年には 地方で暮らす 3046万人が、同国の貧困ラインである 1日当たり1.9ドル(約210円)以下で生活していました。
吴さんのことを知った国民は、主にソーシャルメディアで、「なぜ助けられなかったのか」と疑問の声を上げ、当局への怒りを続々と表明しています。その一方で、弟の面倒をみながら勉強を続けていた吴さんへの称賛も出ているそうです。
貧困状態は「17人だけ」に疑問の声が…
中国はこれまで、2020年までに貧困を「排除」すると宣言してきました。
吴さんの生前、当局は声明を出し、吴さんが 最低限の公的助成金(月額300~700元とみられる)を受けていたと説明しました。
さらに、2万元の一時支援金が 支払われるとしていたそうです。
昨年1月、東部の江蘇省は 住民8000万人超のうち、貧困状態にあるのは17人だけだと発表したのですが、インターネットでは 疑問の声が上がったそうです。