11月24日、韓国はもちろん日本でも絶大な人気を誇ったガールズグループKARAの元メンバーで歌手のク・ハラが自ら命を絶ちました。日本でも関連報道が連日のように報じられていますが、今、韓国で議論されているのがインターネット上に氾濫する「悪プル」の規制…。
「悪プ」とは、「悪性Repl(リプライ)」の略語で、日本で言うと「悪質コメントや中傷リプ」のこと。ク・ハラは自身のSNSや執拗に寄せられる悪質コメに苦しんでいたようです。しかし、悪質コメに苦しんでいたのはク・ハラだけではありません。先月10月14日、ガールズグループf(X)の元メンバーだったソルリもまた悪質コメに悩まされ自ら命を絶ってしまいました。ク・ハラとソルリは仲の良い友人同士で知られており、同じ悩みを抱えていました。
このようなことが続く韓国では今、「インターネット実名制」の必要性が叫ばれており、悪質コメの規制強化が提起されています。「インターネット実名制」とは、インターネット利用者の実名と住民登録番号(日本のマイナンバーのようなもの)が確認できてこそ、ニュースのコメント欄や掲示板に文を残せるという制度です。
10月に韓国が実施した『オンライン書き込み実名制の導入に対する国民世論調査』では、19歳以上の成人502人を調査した結果、69.5%が賛成、逆に反対は24.0%。無回答は6.5%。賛成が過半数を大幅に超えた結果が出たようです。
インターネット実名制の導入については2008年にも韓国で議論されており、そのキッカケとなったのも有名芸能人の自殺でした。自ら命を絶ってしまったその理由のひとつが、ネット上に流布されたデマや悪質コメントだったことから、国会でサイバー侮辱罪やインターネット実名制に対する立法が推進されました。
ところが、2012年に憲法裁判所が違憲という判決を下しました。憲法裁は当時、制度の廃止理由として「表現の自由は民主主義の根幹となる重要な憲法的価値だが、実名制はインターネット利用者の匿名表現の自由を過度に制限する」「実名制施行以後、名誉毀損などの不法情報が効果的に減少したという証拠もない」と挙げました。
しかし、事態は深刻なのは明らかです。何か強い規制がなければ無法地帯となってしまっています。ある芸能界関係者の話によると…「実名制は現実的に効果がなくとも、議論されること自体がメッセージになりうるし、悪質コメントで他人を弄ぶ輩たちに警戒心を与えることもできる。一日も早く現実的で実効性のある制度作りを行われなければならない」と語っています。
悪質コメ対策に実際に動き出しているところもあるようで、韓国のポータルサイト2位のDaum(ダウム)はソルリが亡くなったあとの10月25日、「ニュースと検索サービス改編計画」を発表。芸能ニュースのコメント欄廃止を決定しました。年内中に人物検索の関連ワードサービスも廃止すると発表しています。また、タレントやアーティストなど芸能人たちの所属事務所もデマや悪質コメを流した張本人たちを法的に訴えるなど、強硬な態度を示しています。
韓国ではデマの流布行為が情報通信網法違反(名誉毀損)と認めらると、そのデマの内容にたとえ事実があったとしても3年以下の懲役または3000万ウォン(約300万円)以下の罰金。まったくのデマや嘘、あるなら7年以下の懲役または5000万ウォン(約500万円)以下の罰金に該当する刑事処罰を受けることになるようです。
さらに、今年7月から強化施行されている「インターネットなどの情報通信網を利用した名誉毀損」は、一般的な名誉毀損よりも加重に処罰される量刑基準も設けられました。
どんなに実名制のような法規制を強化したり、処罰のレベルを高めたとしても解決に結びつくのは難しいかも知れません。悪質なデマ、書き込みやを作成する一部のネットユーザーの意識改善が必要で、人間性を正す事が重要ではないでしょうか….。