「あなたが悪いんじゃないんだよ、と息子に伝えたい」
洋菓子メーカー「ゴンチャロフ製菓」(神戸市灘区)の工場に勤務していた前田颯人さん=当時(20)=が2016年に自殺したのは、長時間労働と上司によるパワーハラスメントが原因として、西宮労働基準監督署は労災認定しました。
決定は当時から2年後の6月22日付。母親の和美さんは5日に会見し「あなたが悪いんじゃないんだよ、と息子に伝えたい」と涙ながらに語りました。
87~109時間の超過勤務
颯人さんが2016年6月、神戸市東灘区のJR摂津本山駅で、通過しようとした快速電車に飛び込み亡くなりました。 母親の和美さんによると、颯人さんは高校卒業後、製菓会社に入社。工場でチョコレートなどの製造ラインで勤務していました。タイムカードを基に超過(時間外)勤務の時間を算出すると、始業時刻前から操業準備に入っていたことなどを含め、2015年9~12月は月87~109時間の超過勤務があったようです。
さらに、上司から執拗なパワハラを受けていたといい、同年12月に鬱を発症したようです。通院歴はありませんが、食欲が減退し、部屋に閉じこもりがちになりました。 趣味のツーリングにも行かなくなるなど鬱の症状が現れており、颯人さんは友人に「鬱かもしれん」とメールを送っていたのです。
製菓会社の関係者によると、この工場では始業時刻の1時間~1時間半くらい前の出社が慣例になっているといい、 颯人さんが定刻の30分前に出勤しても上司から「社長出勤やなあ」と叱られていたといいます。
規格外のチョコレートは牧場に提供するため、上司から「また牛のえさをつくってるんか」などと大声で怒鳴られていました。叱責(しっせき)は毎日のように続き、会社を辞めたいと伝えると「辞めたらもうおまえの学校(卒業校)から採用しない」などと言われ、工場内で泣いていたこともあったといいます。
過労自殺だと主張する和美さんに対し、製菓会社側は工場長が神戸新聞社の取材に書面で回答していました。 「時間外が80~100時間になるような長時間労働はなく、パワハラも認識していない。 亡くなる数日前には職場の仲間と食事に行くなど元気にしていたと聞いている」と反論した上で「労災かどうかは労基署の判断を待ちたい」としていました。
ゴンチャロフ製菓は否定
今回、西宮労基署は「強い叱責があるなど上司とのトラブルがあった」「1カ月60~80時間の賃金不払い残業があった」などとして、労災補償の支給を決めました。
和美さんは会見で「息子はじわじわと追い詰められて自死に至った。企業には再発防止を徹底してほしい」と語っています。颯人さんの死後、ゴンチャロフ製菓からは「パワハラも残業もなかった」と説明を受けたといい、「真実を明らかにし、謝罪してほしい」とした。今後、慰謝料などを求めて提訴する方針です。
同社は「労災認定はどういった事実を認定されたのか承知していないのでコメントは難しい。指摘されたような過重労働やパワーハラスメントがあったという認識はない」としています。
まとめ
ゴンチャロフ製菓は母親の和美さんに謝罪しないのでしょうか。。。