16日放送の『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京系)に、最愛の妻をがんで亡くした男性と、甲状腺がんを宣告され全財産を失った料理人の男性が登場しました。がんによって人生を翻弄された2人の生きざまとははたして…。
終電を逃した人に、タクシー代を払うので「家、ついて行ってイイですか?」とお願いし家について行く完全素人ガチバラエティー。誰もが皆、一見フツーでも、ぜんぜんフツーじゃない人生ドラマを持っている!そんな素敵な市井の方々の人生譚を覗いていく番組です。
大宮駅でスタッフが声をかけた堀江さん(55)はトラック運転手です。妻の病気が発覚したことをきっかけに、15年ほど前に転職したのだといいます。前職はホテルの営業で、家に帰れるのは年に3分の1と多忙でしたが、現職は地場が多く、毎日家に帰れるため、転職を決めました。
取引先の会社で働いていた妻と知り合い、1年後に結婚しました。一男一女に恵まれ、幸せいっぱいのさなか、突然の悲劇が一家を襲います。当時32歳の妻が、乳がんを宣告されたのです。すでにステージ4でした。長女はまだ2歳で、「なんとか生き延びたい」と抗がん剤と放射線治療を続け、寛解するも、36歳の時に再発してしまいました。10年間投薬治療を続けましたが、46歳の時に亡くなりました。銀婚式を迎える半年前、2017年6月のことでした。
家の中にはまだ妻の思い出の品があふれていました。
「捨てられないんだよね、汚いんだけど。亡くなったからって、新しいものに一新というのはなかなか……古くなっても汚くなっても構わない。」と、こぼす堀江さん。
「一緒に住んでいたから、全部捨てると妻がいなくなっちゃうんじゃないかなって。妻が生きていた時のものを残しておきたいんだよね。」
妻の死後、慣れないながらも家事をこなす堀江さん。キッチンにはプリントアウトされたレシピの束が置かれていましたが、「この際だから」と言ってスタッフに見せてくれたのは、堀江家オリジナルのおせちのレシピです。2度挑戦しましたが、栗きんとんは火の加減がうまくいかず、上手にできなかったと笑います。そんな中、大学生の長女が帰宅しました。おせちにまつわる母との約束を明かしてくれました。
「『毎年1個でもいいからママのレシピをはるか(長女)がやるんだよ』って、亡くなる前くらいに言われたけど、その時は実感がなくて、いつもママが作ってくれるのが当たり前だったから、一人で作るのがまだ怖くて作れてない。」point 862 | 1
大切な人の死を悼む方法は人それぞれでしょう。ただ静かに心の中で想ったり、誰かと思い出を語り合ったり、堀江さんのように故人の思い出の味を再現したり。長女が母親のおせちを完全に再現できたとき、家族は本当の意味で大切な人の死を乗り越えられるのかもしれません。
かっきーの笑顔たまらん可愛い#家ついて行ってイイですか #賀喜遥香 pic.twitter.com/ZWNd3RPcOX
— ゆーき???? (@yuki_kakitamu05) October 16, 2019
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一方、千駄ヶ谷駅で声をかけたフレンチ料理人の男性・すみさん(46)は、交通費を節約するため、勤務先の広尾から初台の自宅まで8kmの距離を歩いて帰る途中だといいます。スタッフの質問にたどたどしく答えるすみさんですが、それには理由がありました。
約2年前、甲状腺のがん見つかり、その治療費で500万円あった貯金もゼロになってしまったといいます。手術の後遺症でしゃべりづらくなり、その影響か人間関係もギクシャクしてしまいました。前の職場を退社しましたが、そんなすみさんには夢があるといいます。
「人参のサラダとか、お総菜店やデパ地下みたいな形で売ってみたいなって。こたつにみかんがあるように、文化として日本に根付くようなものが作りたい」
「特別な日に食べるもの」「大人になったらやっと食べられるもの」と敷居が高いと思っていたフランス料理ですが、新宿のカジュアルなフレンチレストランに感銘を受け、シェフを目指したすみさんらしい決意でした。
するとすみさん、「ちょっと待っていてください」とスタッフを部屋に残し、ひとり夜の街へ出かけてしまいました。10分後、帰ってきたすみさんの手にはレジ袋が。中身は人参とレモン。なんとスタッフのために、前菜3種盛りを即席で作ってもてなしてくれたのでした。スタッフがペロリと平らげると、この日一番の笑顔を見せたすみさんでした。
自分に余裕がなくなるとなかなか他人に優しくできないものですが、すみさんの振る舞いは、彼にとってシェフが天職であることを感じさせるものでした。point 641 | 1
堀江さんの妻は宣告から14年、子どもの成長を励みに闘病を続けました。すみさんも治療の末、職場復帰を果たしています。働きながらがんと闘う人も少なくない昨今、自分や大切な家族が大病を患ったとき、自分はどう向き合い、生きていくのか…。そんなことを考えさせられる放送回でした。