課長時代から島耕作を見ていますが、最近ではイブニングにて早稲田の学生時代の学生運動に関わった部分を描いてみたり、就活のエピソードを描いてみたり、スピンオフ的な企画も出ていますが何と言っても王道と言えるのは、初芝電産の中間管理職から管理職、経営幹部に上り詰めていく過程を描いているところが、この作品の醍醐味といえます。
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1992年の連載開始からリアルタイムでこの作品と付き合ってきました。企業に勤めるサラリーマンの姿を描いた作品ですから、仕事そのものに関する記述も多く、サラリーマン層は好んでこの作品に向き合ってきたといえると思います。
島耕作のサラリーマンとしての特徴、それは組織の利益を重んじた行動論理を貫くことがある反面、組織を動かしていくうえで絶対に必要な派閥という小集団には一切属さず、権力闘争には興味を示さないということです。
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島耕作は、はっきりいって仕事ができます。島耕作が働いていた分野は、で、華やかなフィールドで仕事をしてきたといえます。小さな仕事にも、忠実に向き合い案件を処理してきたことが、次第に大きな仕事を任されるようになり周囲から認められるようになっていくわけです。
島耕作の回りには、味わい深い有能な上司、同僚が数多く存在しました。上司に認められるという場面は、この作品で何度となく描かれているシーンです。どんなシーンでも、与えられた仕事を遂行するために綿密な計画を立てるわけです。その計画を着実にこなしていくことが描かれていきますが、その計画をこなす過程で必ずといっていいほどトラブルが起きたり、計画を修正せざるを得ない問題が起きたりするわけです。そのトラブルを奇跡的な方法で解決できるということが、マンガのマンガたる所以なのですが、作者の目線からは、あたりまえのことをあたりまえにやっていれば必ずチェンスは巡ってくる、チャンスは必ずくるのだと語っている気がしてなりません。
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トラブルを解決しつつ、実績を上げ、ついには部長にまで昇進し、取締役まで昇りつめることになるのです。現実のサラリーマン社会では、取締役に上り詰める等のストーリーは万々歳のサクセスストーリーだといえます。しかし、役員に昇進してからも派閥等に属することはなく、かえって無派閥を貫き通した、恩師ともいうべき中沢喜一社長の薫陶を受け、結果として無派閥という派閥に入っていたともいえます。どんな苦境に陥る場面でも、島耕作の脇を固めるキャラが必ず現れ、彼を支えてくれるのです。そして、彼を支えてくれる存在は、女性の存在が多かったことも特筆に値し、世のサラリーマンの羨望の的となったのでした。
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経営者としての評価も高いといえます。常務、専務、社長となってしまうと、流石にプレイヤーとしての島耕作の行動は控え目になった感がありますが、逆に意思決定者としての島耕作像が描かれることになりました。読者が、島耕作に求めるもの、それはやはり行動力なのだと思います。その意味では部長時代や取締役として行動派役員として描かれていた島耕作が秀逸だったような気がします。普通のサラリーマンであれば部長や取締役ともなればアガリのポストでしょう。あまり熱心には仕事をしなくなるのが世の常のような気がします。
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しかし島耕作の場合は違っていました。出向先の子会社を立て直してみせたり、またもやトラブルを解決してみせたり、難しいとされる中国ビジネスを成功させたり、八面六臂の活躍だったといえます。彼の人生哲学なのでしょう、とにかく与えられた仕事に真摯に向き合い、問題を隠すのではなく徹底的に浄化しようとするさまはコンプライアンス順守の塊のような行動でした。だからこそ、経営者としての評価も高いといえるのだと思うのです。