投開票まで残り4日となった参議院選挙…。候補者たちは選挙カーに乗り込み、各地を駆け回っている一方で「選挙カーがうるさい」「名前を連呼するばかりで意味がない」など、有権者の不満は根強くなっているようです。
走行中の選挙カーで、日本の候補者たちが名前を連呼するのには理由があるのでしょうか?専門家に話を伺いました。
なぜ、選挙カーを使うのか?
皆さんがまず初めに疑問視するのは、何故選挙カーを使用するのかということ。
これは実は、法律の問題が大きく関わってくるといえます。
米国なんかでは、日本のような選挙カーを見かけることはほとんどなく、候補者や支援者らは主に集会や戸別訪問で政策や支持を訴えており、テレビCMやポスティングなどへの強い規制もありません。
一方、日本の公職選挙法では買収への懸念から、戸別訪問が禁止されており、お金のある人もない人も平等に闘えるように、という趣旨のもと選挙運動に使用するポスターやビラの枚数、大きさに至るまで厳しく制限されているんです。
選挙カーは最大の武器になる
公選法により、選挙カーを使うことは、選挙期間中の要と言っても過言ではありません。といいますのも、選挙カーは午前8時から午後8時まで自由に使用することができるからなんです!
選挙カーは大きな看板に顔写真や名前を大きく載せられ、スピーカーで音を出すこともできる….
運用次第で非常に多くの有権者の目にとまり、耳にも触れる。動く広告塔だといえるでしょう。
では、本当に選挙カーは効果があるのか?というところに焦点を当ててみましょう。
実は、非常に効果があるそうで、選挙カーを回せば回すほど票になる、というのは業界の常識だといいます。
関西学院大の三浦麻子教授(社会心理学)らの調査では、選挙カーが自宅のすぐ近くを通った有権者は、その候補者に投票した割合が平均の約2倍に達したという報告もされています。
「選挙カーがうるさい」という声もある中で、高齢者や子育て世代からは、「なんでウチらの地域には選挙カーが来ないんだ。別の候補の選挙カーは来ているぞ」と催促の電話がかかってくることもあるそうで、もはや選挙カーは日本の「伝統芸能」なのかもしれません。
「うるさい」という抗議はあるのか?
公選法では「何デシベルまで」といった音量の規制はありません。しかし中には、「寝ていた子どもが起きてしまった」「学習塾で試験をしているので静かにしてほしい」といった声があるのも事実…..
学校や保育園、病院、診療所などの周辺では静穏を保持するように努めなければならない、とする規定がありますので、音を出せない場所もあるが、基本的には音量に規制がないのも選挙カーの特徴だといえます。
そしてまた、近年、ネット上では「選挙カーがうるさいので、その候補には入れない」といった投稿も見られるようになってきました。
しかし、ネット上では不人気ではあるかもしれませんが、専門家曰く、実際の選挙の当落にほとんど影響していないことを考えると、選挙カーを批判している人たちはあまり投票に行っていないのではないかという指摘をしています。
選挙カーはなくなるのか?
ここまでで、選挙カーが候補者にとっての「最大の武器」であることは理解できたと思います。
でもやはり、名前を連呼して刷り込むようなやり方には違和感が残りますよね。でも実は、公選法によって、移動中の選挙カーでは演説が禁止されおり、例外として連呼行為だけが許されているといいます。
立候補者が勝つために有効である以上、陣営としては選挙カーを使わざるを得ません。しかし、選挙カーを使用するには多額なコストがかかるため、「本当はやりたくない」と思っている立候補者も多いといいます。
そのため、公選法を変えてみんな一律に選挙カーを使えなくすればいいの指摘の声も上がってきています。
しかし、法律を変えることのできる国会議員が利害当事者である点が、問題を難しくしているとのこと….
または、もっと投票率が高くなり、有権者が候補者の政策や経歴などをよく比較して投票に行くようになれば、おのずと選挙カーは廃れるとの声もあります。
ネットの反応は?
「はやく選挙カー規制して欲しいわ。夜勤明けでようやく寝れると思ったら、これの大声で起こされる。走るのは良いよ。ただ、声あげるのだけはやめてくれ。」
「宣伝カーでうるさい候補者には投票しないという意識付けになりますね」
「いやいや、うるさいですよ。通行の邪魔にもなってるし。頑張ってるとこ見て下さい感が迷惑。普段からウロウロして飛び回って動き回ってれば理解できるけどね。選挙前パフォーマンスは本当に気持ち悪い」
との声が上がっています。
参院選で選挙カーを見て「うるさい」と単に迷惑がるのではなく、これを機会に、日本の選挙について考えてみるのもいいのではないでしょうか……