菅首相は、新型コロナウイルスの感染流行が続く中、東京五輪の開催を決断した理由として、
日本の感染者数は欧米諸国に比べれば少なく予防対策も更に徹底しているので正しい判断だと述べました。
東京オリンピックの開幕式まで3日となった20日、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューに応じました。
五輪の開催は、日本と世界の双方に危険が及ぶとの批判が上がっています。
菅首相は、1日当たり数万人の新規感染者が出ているのに、マスクを付けていない観客があふれかえっている会場でテニスのウィンブルドン選手権やサッカー欧州選手権を行ったイギリスの事例に言及しました。
菅首相は「感染者数なども、海外と比べると、一桁以上といってもいいぐらい少ない」「ワクチン接種も進んで、感染対策を厳しくやっているので、環境はそろっている、準備はできていると、そういう判断をした」と述べました。
また、「海外から選手を含め5万人以上が日本を訪れる予定の中で、マスク着用が極めて重要だ。」と指摘し、「マスクを外してしゃべることが一番広がりやすいと言われており、日本国民は徹底してやってくれている」と述べました。
菅首相は、近隣の関係者から五輪を中止することが最善の判断だと何度も助言されたのに対し、「やめることは一番簡単なこと、楽なことだ」「挑戦するのが政府の役割だ」と語ったそうです。
東京のコロナ感染者数は持続的に増加傾向にある中で、菅首相は東京五輪までの緊急事態宣言を東京に発令しました。しかし、その主な対策は飲食店に対する酒類提供の停止と営業時間短縮の要請だけで、外国で導入されているロックダウン(都市封鎖)よりも遥かに軽い対策となり、日本ではほぼいつも通りの日常生活が続いています。一部の飲食店では政府の方針に逆らい営業を続けていますが、菅首相は「日本人は、政府がそういう方向を示すと、多くの人が協力してくれる」と肯定的な意見を述べました。point 231 | 1
続々とワクチン接種を終える人が増加する中、日本の感染者数、死者数は大きく減少しました。菅首相は「日本の状況は、数字に表れているので、やはり世界に発信すべきだ」と述べました。
菅首相は、自身が国際オリンピック委員会(IOC)の「人質」になっているとの見方に対し「そこは全くない。日本は手を挙げて、日本でオリンピックをやりたいと招致してきた」と人質内容を否定しました。更に「IOCは日本との契約に基づき、五輪中止を決定する唯一の権利を有している。 その上で、押し付けられるようなことだったら、跳ね返す」と東京五輪への強い意志を述べました。
しかし、毎日新聞が先週末に行った世論調査によると、菅内閣を支持しないとの回答は1カ月前の調査から7ポイント上昇し62%に増加した一方、支持するとの回答は30%しかおらず、他の世論調査でも同じような結果となりました。
また、日本国民の約3分の2は、五輪を楽しめるとは思っていないと回答したのに対し、菅首相は「競技が始まり、国民がテレビで観戦すれば、考えも変わる。」「大半の競技が無観客での開催となるため、自身もテレビで観戦する。」「学生時代にやっていた空手の競技を楽しみにしている。」と話しました。 また、1964年の東京五輪で日本選手がメダルを獲得した思い出を振り返り、「自分が興奮して見た、感動を受けたことなど、いまだにこのまぶたに焼き付いている」「世界で約40億人の人がテレビなどで観戦するといわれている。そういう意味で、無観客でやる価値というのは、ものすごく大きいと思う」と話しました。point 293 | 1
2017年~2019年に米国の駐日大使を務めたビル・ハガティ上院議員は、2022年に中国・北京で行われる冬季北京五輪を開催することを踏まえると、東京五輪は重要な位置にあると指摘しました。中国は五輪を利用して実績を誇示するとともに、コロナ封じ込めにおける中国の成功を声高に掲げる習近平国家主席の正統性を高めることを目指すとみられています。
これに対しハガティ氏は「日本は東京五輪開催を通じて、いかにして強力な民主的な社会が五輪を実現出来るかを示す機会を有している。北京五輪とは、その差が如実に表れると思う」と述べました。