週刊少年ジャンプに連載されていた人気漫画作品である『るろうに剣心』は、幕末から明治時代の日本を舞台にした冒険活劇画です。この作品は漫画だけにとどまらず、テレビアニメにもなり、その後映画作品として実写化もされたため、長年の間、幅広い世代のファンに親しまれてきました。この作品がアニメ化されるにあたってスタッフが大きなこだわりを持ったのが、誰にこの物語の主人公である緋村剣心を演じさせるのかということです。そこで白羽の矢が立ったのが宝塚出身の涼風真世さんでした。
涼風真世さんへのオファー
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漫画『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の連載が週刊少年ジャンプに開始されたのは1994年のことです。この作品は連載が開始されると徐々に読者の人気を獲得し、1996年1月からはフジテレビ系列のテレビ局でアニメ化されることになりました。この作品の監督を務めたのは古橋一浩さんで、もともとはアニメーターとして活躍していたのですが、その後、演出の仕事も手がけるようになります。古橋監督はるろうに剣心で監督を務めるまえにも、多くの有名なアニメ作品で仕事をしていて、特に高橋留美子先生の漫画が原作のアニメの仕事を多くしています。point 340 | 1
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『うる星やつら』では作画監督を務め、『めぞん一刻』ではアニメーターを担当しています。古橋監督が本格的に演出を始めたのも高橋先生の作品で、『らんま1/2』では絵コンテと演出を担当しています。そんな古橋監督がるろうに剣心の監督をするにあたって、主役の緋村剣心役の声優として注目したのが、涼風真世さんです。涼風さんは宝塚の月組で活躍した女優で、月組にいた当時はトップスターまで努めた人気者でした。主役の緋村剣心は男の剣士という役柄なのですが、外観に女性的なところがあり、性格も優しくて男らしいことから、宝塚で男役をしていた涼風さんが最適なのではないかと考え、スタッフは出演の依頼を申し込みます。point 357 | 1
スタッフの絶え間ない努力
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アニメのスタッフから『るろうに剣心』の緋村剣心役を持ちかけられた涼風真世さんでしたが、オファー当初、涼風さんはこの仕事は断るつもりでした。なぜならば、宝塚を1993年に退団した後、涼風さんは本格的に女優として活動するにあたり、宝塚時代のような男役をしないことに決めていたからです。声優とはいえ、るろうに剣心の主人公の緋村剣心は男であったことから、当然、涼風さんがこの仕事を引き受ける理由は何もありませんでした。そのため、涼風さんはこのオファーを一度断ったのですが、それでも監督の古橋さんをはじめとしたアニメスタッフは涼風さんに剣心の役を演じさせる思いを捨てることはできませんでした。point 378 | 1
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涼風さんの説得にあたり、特に積極的に活躍したのがこの作品でアフレコ演出を担当していた三ツ矢雄二さんだと言われています。三ツ矢さんは時間をかけて熱心に涼風さんに働きかけて、涼風さんに剣心役を引き受けてくれるように努力したということです。もともと三ツ矢さんは声優としても活躍している人で、『タッチ』の上杉達也役などが有名ですが、そうした、三ツ矢さんのアニメ作品に対する強い熱意もあって、最終的に涼風さんは剣心役を引き受けることを了承します。こうした複雑な経緯を経て決まった剣心役でしたが、今では剣心の声を聞けばすぐに涼風さんを連想させるほどに、多くのファンの間にその存在がしっかりと定着しています。point 368 | 1
まとめ
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るろうに剣心は涼風真世が宝塚を退団してから、初めて挑戦した男役だったのですが、宝塚時代からの男役の経験を生かして、優しくて男らしい剣心を見事に演じきりました。剣心は剣の達人というだけでなく、コミカルな一面もあわせもつキャラクターなのですが、こうした三枚目の部分も涼風さんはしっかりと演じています。涼風さんも当初はシリアスな部分をどう演じればいいのかわからずに悩んだそうですが、それでも涼風さんは熱心に剣心の役柄を工夫して、剣心のキャラクターを作り出しました。point 296 | 1