顔の変形やあざ。そのような特徴的な外見で視線が集まったり、学校や職場でも差別を受けてしまう「見た目問題」が生じてしまいます。ところが、生まれつきで顔の右側にあざがある大学4年生の彩さんがインスタグラムで自分の顔を公開したのです。公開した理由は何だったのでしょうか。朝日新聞が彩さんに話を聞きました。
写真:withnews
彩さんは笑顔が素敵な、よく見かける大学生でした。たった一つ違うのは顔の右側に薄い紫色のあざがあっただけです。
彩さんは生まれつきの「単純性血管腫」であり、紫色に見えるのは毛細血管が拡張しているからです 。中学1年生の冬までは年に3回ほどのレーザー治療を受けてきたが、そのあざには痛みもなく、見た目以外の症状はありません。
[rsnippet id=”4″ name=”DFP/34009881/Article_2″]
3年前に始めたインスタグラムに掲載している約1000枚目の写真の中、彩さんは今年の4月4日に初めて顔を公開しました。「“世の中、色んな人がいるんだなあ”と知ってもらいたい。皆知っていれば、見た目によって友達ができない、働けない、とか様々な“見た目問題”が少しは解消されるはず」というコメントと一緒に写真を公開し、1900件を超える「いいね」がありました。
写真:毎日新聞
「もともとは日記の代わりに、旅先で撮った写真を載せていました。でも、顔写真を公開するのは、避けていました。SNSで公開することに抵抗や怖さがありましたので」
「フォロワーが増える中で、SNSとリアルな自分が乖離(かいり)していくことに抵抗を感じていました。また、SNSで知り合った人と、実際に会って友だちになることもあるので、SNS上に素の自分を出したほうがいいと思い、顔を公開しました。見た目問題に悩んでいる人たちの力になりたいとの思いもありました。私がSNSや街中で顔をさらしまくるから、みんな単純性血管腫のことを知ってねって、感じです」
[rsnippet id=”4″ name=”DFP/34009881/Article_1″]
彩さんが写真を公開した後、フォロワーは4000人まで増えました。初対面の人にもあざを説明する必要がなくなり、友達作りが楽になったと伝えています。
また、同じ症状を持つ子どもの親からもメッセージが届いたそうです。そんな時は彩さんは必ず、「親が隠すのだけは絶対にやめて」と伝えるそうです。
写真:withnews
「確かに、外に出れば、傷つくことがあるかもしれない。でも、『かわいそう』だからと外に出ないと、子ども自身が『自分はかわいそうな存在なんだ』って思うようになってしまいますから」
彩さんは自信を「気が強く、いじられないタイプ」の子どもだったと話しています。
「あざのことでいじめられた経験はありませんが、小さいころから他人の視線には敏感でした。」
写真:Yahoo!ニュース
「街で、知らない人に顔を見られまくることに困っています。一瞬、パッと見られるくらいなら、まぁ仕方ないなって割り切っています。症状がある私だって、知らない症状を持つ人に会ったときにびっくりすることがありますから。でも、好奇の目で2回も3回も見てくる人には、不快感を覚えます」
[rsnippet id=”4″ name=”DFP/34009881/Article_3″]
「電車で隣に座ったおばちゃんに、『どうしたの?』って聞かれて、生まれつきって説明したら、『女の子なのにかわいそうねぇ』って言われて。なんで私は見知らぬ人に同情されるんだろうって。おばちゃんに悪気はなかったと思うので、許していますが。『かわいそう』とか勝手に決めつけないでほしいですね」
写真:暇人見聞録
そんな他人の視線はアルバイトを探す時も壁になってしまった経験がありました。
「派遣の登録に行ったとき、面接相手に『その顔でもできる仕事を探そうね』って趣旨のことを言われて、『エッ』と思いました。結局、1度も仕事はもらえませんでした。見た目が関係あったのかどうか、実際はわからないですけど、面接での反応から考えると、差別されちゃったのかなって思いました」
他人の視線が気になるせいで、彩さんは恋愛にも消極的になってしまったのだそうです。「一緒にいたら、彼も他人からの視線を浴びるわけですから」
写真:毎日新聞
あざとの付き合いにポジティブなメッセージを送る彩さんに、あざのある顔を受け入れていますか?と最後に聞きました。
「『受け入れている』って表現はしっくりきません。今も、『あざがなかったらよかったなぁ』ってふと思うこともあります。正直、コンプレックスです。でも、『コンプレックス=ダメなもの』ではないと思います。私の『個性』とも思っています。覚えてもらいやすいですし。自分があざをもって生まれたことに、何らかの意味があると思っています」