2015年に東京都内の郵便局で働いていた30代女性が、勤務中に上司の男性から業務用ガムテープを口に貼られるなどしたショックで精神疾患になり退職を余儀なくされたとして、男性と日本郵便に計1712万円の損害賠償を求めた訴訟で、熊本地裁玉名支部が両者に計195万円の支払いを命じる判決を言い渡していたことが判明しました。
15年11月12日夕方、窓口で会計作業をしていた女性の背後から、上司の男性が梱包用のガムテープを女性の口に貼り、はがされます。そのせいで女性はけがをしたなどと郵便局長に報告したが、「かわいくて、ちょっかいを出しただけ」などと言われ、十分な対応をしてくれなかったそうです。また、この男性にも訴えたが「レモン、付けようか」などと答えるだけだったといいます。女性は下唇の皮の大部分がはがれて赤く腫れ上がり、ただれるなどしたため、翌日から休職。ショックで仕事ができる精神状態でなくなり、熊本県に帰郷し、精神科で適応障害やうつ病などと診断され苦しんでいました。女性は職場復帰できずに16年9月、退職。男性は郵便局側の聞き取り調査に、「忙しかったので、気持ちを和ませるため、いたずらな気分でやった」などと説明していました。
1審判決は、これらの行為が女性の精神状態と「相当因果関係が認められる」と判断しました。男性の行為について「職員間のいたずら以上の意義は認められない」と指摘し、郵便局長が女性に診断書の提出を求めないなど事実調査を怠ったとして、日本郵便が「使用者として職場環境配慮義務を怠った」と認めました。 さらに、高裁判決もこれらを追認し、男性の行為について「勤務中に突然行われ、心理的負荷が相当程度強いものであった」としました。判決を受け、日本郵便の担当者は取材に「重く受け止めており、引き続き、社員が安心して働ける職場づくりに努める」とコメントしています。
6月29日付で、男性と日本郵便に計1712万円の損害賠償を求めた訴訟で、熊本地裁玉名支部が両者に計195万円の支払いを命じる判決を言い渡していました。12月21日にあった控訴審判決で、福岡高裁(梅本圭一郎裁判長)は1審判決を支持し、賠償額を計259万円に引き上げています。
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