村山由佳さんは、1964年生まれの53歳です。
1990年26歳の時に小説家として活動を始め、翌年にはデビュー作である「いのちのうた」で環境童話コンクールで大賞、「もう一度デジャ・ヴ」でジャンプ小説・ノンフィクション大賞で佳作を受賞する等、輝かしいデビューを飾りました。
代表作には「天使の卵~エンジェルス・エッグ~」や「星々の舟」があります。
特に「天使の卵~エンジェルス・エッグ~」はNHK-FMでラジオドラマ化されたり、のちに松竹にて映画化されています。
写真:楽天ブックス
「ダブル・ファンタジー」
そんな村山由佳さんの作品の中で、衝撃的な小説として挙げられているのが「ダブル・ファンタジー」です。
写真:books.bunshun.jp
作家としての才能に恵まれながらも、夫との関係が上手くいかない小説家の奈津が主人公です。
35歳の奈津は「高遠ナツメ」というペンネームで活躍しています。
夫は3歳年上の省吾です。
省吾は勤めていた会社を退職して奈津のサポートに徹していましたが、結婚から年月が経つにつれて夫婦の間に亀裂が生じ始めました。
省吾が奈津に対して、干渉したり束縛するようになり、奈津がそれに耐えられなくなったのです。
そんな時に奈津は以前より憧れていた演出家の志澤とメールでやり取りするようになり、体の関係を持つようになってしまったです。
この出来事がきっかけで奈津は省吾の元を離れて自由に生活するようになりました。
そしてその後4人の男性と関係をもつこととなります。point 383 | 1
作品に感情移入
写真:
性行為の前後も深く描写されており、作品中の多くをその描写が占めていますが、官能小説ではありません。
男の本質とは何か、女の本質とは何か。
性描写がありながらも卑猥さを感じさせない言葉の言いまわしで、作品に感情移入させられていきます。
仕事か性行為かしかしていないようにも取られてしまう主人公の奈津ですが、村山由佳さんの語彙力によって、気が付かないうちに多くの女性が奈津に共感させられてしまいます。
貞操観念の薄い奈津ですが、読者が嫌悪感を抱かずにいられるのは、村山由佳さんの技量故です。point 305 | 1
心情の描写が大事
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女性視点で語られる官能小説のようで、それだけにとどまりません。
性描写が多いながらも、心情の描写も丁寧になされていることから、奈津という女性を通して男女間の世界や価値観の違いを痛感させられる小説となっています。
この作品は、第22回柴田錬三郎賞を受賞しており、小説として評価はされていますが、その内容から賛否の分かれる作品としても知られています。