中国湖北省の武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎が集団発生しており、世界保健機関(WHO)はこの新型コロナウイルスを「2019-nCoV」と命名しています。市当局は23日から公共交通の遮断に乗り出し、市外へ向かう鉄道や航空便の路線を封鎖しました。
新型コロナウイルスによる肺炎は昨年12月に武漢市で報告され、旅行者を通じて中国国内や海外にも広がったとされています。報道によると、同ウイルスに感染して最初に入院したのは、武漢市の海産物卸売市場の従業員や利用客でした。同市場では食用の動物や爬虫類も販売されていますが、水産物のコロナウイルス感染は報告されていないことから、市場で売られていたそれ以外の動物から感染したのではないかということです。
すると、学会誌に中国に生息する「アマガサヘビ」や「タイワンコブラ」が感染源だった可能性を指摘する論文がに発表されました。研究チームが2019-nCoVの遺伝子配列を解析して他のコロナウイルスと比較した結果、重症急性呼吸器症候群(SARS)に似たコウモリのコロナウイルスと最も近い関係にあることが判明したとのことです。しかし、2019-nCoVの遺伝子配列についてさらに詳しい生物情報工学解析を行ったところ、このウイルスがヘビから来ていた可能性が浮上。
これにより、中国では「感染拡大を防ぐためになるべく外に出ないように」との呼びかけがなされており、市内はひっそりとしているといいます。市民からは不安の声があがっており、父親が新型肺炎を発症したという30代女性は、「外に出ないようにしているが、子どもはすでに感染してしまっているのではないかと心配で毎日、泣きながら過ごしている」とコメント。かなり追い込まれている状況のようです。
また、武漢市にはたくさんの日系企業が進出しており、日本人の駐在員や留学生も多いといいます。日本貿易振興機構(JETRO)武漢事務所によると、武漢在住の日本人は約460人にのぼり、長期出張者や留学生を含めると500~600人ほど。他にも、日系企業は自動車関連を中心に、約160社が進出しています。感染の拡大による影響は、現地の日本人にも及んでいます。
「突然だったので、脱出できなかった人もいると思う。ただ、感染拡大を防ぐには仕方ないのかもしれない」そう語るのは武漢大学に留学中の日本人男性です。23日未明に「武漢が封鎖される」という友人からの電話で目を覚ました男性は、慌てて荷物をまとめて駅に向かったそうです。運良く閉鎖直前だった上海行きの高速鉄道に飛び乗ることができたため、武漢市から避難できたといいます。しかし、多くの日本人が避難できていない状況に、日本国内でも不安が募る一方です。