毒蛇は一部に例外もありますが、大きく分けると2種類です。ストローのように中が空洞になった毒牙の管牙(かんが)をもつクサリヘビ科、牙の横にある溝を伝って毒を注入する溝牙(こうが)をもつコブラ科に分けられます。日本に生息する毒蛇で管牙をもつのがマムシやハブ、溝牙をもつのがウミヘビなどがあります。蛇の毒は人間で言うところの唾液に由来するもの、タンパク質を分解する成分が含まれているのです。消化を助ける毒を獲物に注入することで、手が無い蛇には飲み込みやすく消化を助ける働きをするのです。つまり毒には、蛇にとってはお腹に優しい効果があるというわけです。
日本国内のほぼ全域に生息するマムシと沖縄周辺に生息するハブ
写真:Naverまとめ
写真:危険生物.
日本に生息する毒蛇で、管牙をもつクサリヘビ科の代表がマムシとハブです。
マムシはクサリヘビ科マムシ属、北海道から沖縄まで、日本国内のほぼ全域に生息しています。
頭部は先端が尖った三角形に近く、首は細いのですが胴体はずんぐりと太いことが特徴。身体の模様は楕円形の斑文で、メガネ模様に例えられます。上あごの牙の先端に毒牙があり、獲物に噛みついて毒を注入するのです。たんぱく質を分解する酵素を含む毒は出血毒で、細胞を破壊し、血液が止まらなくなってしまうのです。
草木が多い観光地では「マムシ注意」の看板を見かけますが、雑木林や落ち葉の下、川辺の岩の隙間などを好んで潜んでいるのです。
写真:ameblo
そして沖縄周辺のみに生息するハブは、クサリヘビ科ハブ属。
ヒメハブ
写真:yamoyo.sakura.ne.jp
ホンハブ
写真:蛇覚書
サキシマハブ
写真:memobird3.exblog.jp
タイワンハブ
写真:Scoopnest.com
の4種類が確認されています。
頭部は大きくクサリヘビ科の特徴の鼻先が尖った三角形、色と模様は地域によって異なりますが、黄色と黒褐色の斑文が入っています。毒蛇にイメージが強いハブですが、実はハブの毒はマムシよりも弱いのです。
しかし毒牙が大きく毒液の量が多いためかつては多くの犠牲者がありましたが、血清が普及した2000年以降は1人の犠牲者も出ていないのです。
写真:ライブドアブログ
近年ではハブを捕獲すると県や市町村から報奨金が出るため、
写真:JOB SENBA
小遣い稼ぎに捕獲されることが増えたため駆除率が高くなっており、大きなハブを見かけることも減っているのです。
ごく最近、毒蛇として知られるようになったヤマカガシ
写真:commons.wikimedia.org
最近まで毒蛇とは認識されていなかったのが、ナミヘビ科ヤマカガシ属のヤマカガシ。
毒蛇として知名度は低いものの、日本国内の広い地域に生息しています。
1972年に捕まえようとした中学生が咬まれて死亡した事件が発生してから、毒蛇として知られるようになったのです。
頭はマムシやハブのような大きな逆三角ではなく細い丸型、クリッとした目の愛嬌がある顔。首周りに黄色のリング状の模様が入り、胴体は赤や黄色、黒が交互に重なるカラフルな色合いをしています。しかしヤマカガシの模様は地域差や個体差が大きく、黄色のリングがなかったり西日本では赤が全く入らない黒化型のタイプも見られます。無毒なアオダイショウとそっくりの柄の個体もいるのです。
形や色では素人には全く判断できないやっかいな毒蛇ですが、毒牙が奥歯にあるためよほど深く咬まれないと毒が注入されることはないのです、そして気性が大人しく、攻撃を加えない限りは人間に危害を加えることは滅多にないのです。
そして日本近海に生息するウミヘビは、溝牙をもつヘビ亜目コブラ科の毒蛇です。
写真:おきなわ図鑑
ウミヘビの毒は、ハブの80倍と言われるほど、ヘビの中でも最強とされる猛毒なのです。コブラ科のヘビ毒は神経機能に作用する神経毒で呼吸困難や運動障害を引き起こし、最悪のケースは心臓麻痺などで死亡してしまうのです。強力な毒をもつウミヘビですが、本来は臆病な動物で自分から噛みつくことは滅多にないのです。主な咬まれる理由は陸上で踏んでしまった場合、または魚を捕る網にかかったウミヘビをはずすときなので、海中で咬まれるような事故はほぼ無いのです。point 314 | 1
まとめ
写真:Frame illust
蛇の中では毒を持つ有毒種のほうが少なく、毒を持たない無毒種のほうが多いのです。日本では年間約3000件のマムシ被害があるとされ、約10人の方が命を落としています。マムシの致死率は意外に高くないのです。亡くなった方のほとんどは、咬まれた後にきちんと処置をうけなかったことが原因といわれます。攻撃的な種類もありますが、日本国内に生息している毒蛇はほとんどが大人しく臆病です。蛇を見つけてもむやみに近づかず、驚かしたり手を出さないこと。そして万が一咬まれたときには、出来るだけすみやかに医療機関の治療を受けることが大切です。point 332 | 1