横浜DeNAベイスターズと、福岡ソフトバンクホークスの間で行われている今年の日本シリーズですが、このままソフトバンクが日本一となれば、必ずシリーズの流れを決定づけるポイントとして挙げられるだろうプレーが、今宮健太選手の「神の手」ヘッドスライディングです。
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このプレーは、日本シリーズ第2戦に起きました。試合は第1戦を10対1で圧勝したソフトバンクが、2点リードされて7回裏を迎えます。アウトカウントはツーアウトながら、1点を返し、なおもランナー満塁。1打出れば、走者が二人返って逆転もあり得る場面です。逆にこの回を1点に抑えることができれば、そのままDeNAが逃げ切り、対戦成績は1勝1敗の五分に持ち込める。ソフトバンクにも、DeNAにも、まさに正念場です。point 268 | 1
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そんな緊迫した場面で、バッター中村晃選手の打球はライト前へのヒット。3塁走者の柳田悠岐選手がホームインして同点に。続いて2塁走者の今宮選手も激走し、頭から本塁めがけてヘッドスライディングします。そこへ、バックホームされた球が、キャッチャー戸柱恭孝選手のミットに、戸柱選手は、すぐさま今宮選手にタッチします。
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際どいタイミングでしたが、審判の判定は「アウト」。すぐさまソフトバンクの工藤公康監督が、ベンチから飛び出します。これまでなら、ここで猛抗議が行われるも判定はくつがえらず、今宮選手はアウトで、DeNAが同点で7回を切り抜け、8回に逆襲して勝ち越したかもしれません。昭和53年に行われた、阪急ブレーブスと東京ヤクルトスワローズの日本シリーズでは、ヤクルト大杉勝男選手の打球が、ホームランかファールかを巡って、阪急の上田利治監督が、実に1時間19分の猛抗議をおこなうも聞き入れられず、ヤクルトが日本一になっています。同じことが、平成29年の日本シリーズに起こらないとも限りません。point 377 | 1
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しかし、このシリーズでは、「リプレー検証」というのを監督が要請した場合、審判の判断だけでなく、映像を見てほしいと、工藤監督が監督会議で要求し、審判団も「考慮します」と答えています。これは、肉眼では判断しづらい、際どいプレーがあった場合、審判の判定が本当に正しかったかどうか、いくつかのビデオカメラからの映像を検証して、あらためて判定を下すというものです。ちょうどテニスでいうところのチャレンジシステムと同じです。事実、この試合で工藤監督は、3回にあったソフトバンク松田宣浩選手のポール際へのファールに対しても、リプレー検証を要請しています。ただし、この時は判定は覆りませんでした。そして、この場面で、工藤監督は、この「リプレー検証」をふたたび要請したのです。約8分間の検証ののち、審判が下した判定は「セーフ」。今宮選手のホームインが認められ、ソフトバンクは逆転に成功して、そのまま第2戦も勝利しました。point 470 | 1
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殊勲の今宮選手は「3塁を蹴ってヤバいなと思ったので、足で行かなくて(タッチされにくい)頭で行こうと切り替えた。左手首の上をタッチされたので、もしかしたら、と思った。ベースを触った感触はあった。セーフと言われた時はめちゃめちゃ嬉しかったですよ」と、焦点のプレーを振り返りました。また、工藤監督は「ドキドキする試合だった。晃くんのヒットと、今宮くんのすばらしいヘッドスライディングが、この勝利を呼んだ。7回はみんなが逆転するんだという強い気持ちでのぞんだ」と、ナインの集中力の高さに感謝しながら、中村晃選手と今宮選手を称えています。いわば、ナインのみんなの集中力と、工藤監督の執念が生み出した、奇跡のプレーといえるかもしれません。point 389 | 1
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日本シリーズの行方は、現在、ソフトバンクの3勝1敗で、まだどうなるかわかりませんが、今宮選手の「神の手」ヘッドスライディングは、きっとこの先も、日本シリーズ屈指の名場面として、必ず語り継がれるでしょう。プロ野球の歴史を彩る、新たな1ページとなるに違いありません。