宇宙航空研究開発機構(JAXA)は今月25日に、宇宙飛行士の古川聡さんらが責任者を務めた宇宙に関する医学研究で、データの取り扱いなどに不適切な事案があったことを発表しました。宇宙基地のような宇宙での閉鎖環境を想定した実験で、存在しないデータを作成したり、データを書き換えたりする不正行為があったといいます。古川さんの直接的な関与はなかったものの、管理監督責任を問われています。
古川さんは来年を目標に、2回目の国際宇宙ステーション(ISS)への長期滞在を計画していました。JAXAは研究に関する医学的な指針に違反するとして、古川さんを含む関係者を処分する方向で検討しているといいます。処分内容は検討中で、来年の宇宙飛行についての予定変更は「今のところ考えていない」としています。
今月25日に記者会見を開いたJAXAの佐々木宏理事は「国民の皆さまの負託にこたえられなかった。関係者の皆さまに深くおわび申し上げる」と話しました。
当研究は2016年から始め、宇宙ステーションなどでの長期滞在におけるストレスを評価する目的で、健康な人を閉鎖環境に約2週間滞在させて、そのストレスの程度を血液検査や面談などで評価するといった内容でした。
一昨年11月にJAXA内の研究に関する倫理審査委員会などから不適切な行為があった可能性について指摘があり、JAXAは対策検討チームを設けて、去年10月から調査、検討を進めていました。
調査結果、実施していない面談の記録があったほか、診断結果の書き換えが複数確認されました。アンケートについては多数の計算ミスや不適切なデータ管理があり、研究ノートの作成も不十分でした。研究の実施を評価するJAXA内の外部諮問委員会の評価を受けずに実施した試験もあったといいます。
JAXAは原因について「経験や知見がある人材が不十分で、適切な指導者がおらず十分な教育指導がなかった。組織として医学研究に対する認識の甘さと経験不足があった」などとしています。
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