26日、富士山の登山道で登山客の女性に落石が当たり、女性は死亡しました。近年の富士山ブームは凄まじく、登山客数は例年30万人前後にも上りますが、実態を知れば、登るのをためらうような現実があるようです。あなたは登山の恐ろしさを知っているでしょうか。
落石の危険性
事故は富士山の山頂付近で起きました。亡くなった女性は午後9時に登山を始め、午前5時頃、山頂まであと少しという場所までたどり着きましたが、落石が胸に当たり死亡したのです。
学生時代に山岳部に所属し、富士山にも何度も登ったことがあるスポーツライターは「登山は日が暮れたら動かないのが鉄則ですが、富士山は地形が単純で、登山道も分かりやすいので、夜を徹して登るのが当たり前になっています。しかし、登山道には安定していない岩がゴロゴロと転がっている場所があり、ここは危険です。それゆえ、そういった場所にはロープが張られていますが、登山客が多すぎて渋滞するため、ロープ外を歩いて追い抜こうとする人間が多く、小さな落石事故はしょっちゅう発生しています」と話しています。
誰でも登れるイメージの富士山ですが、1980年8月には山頂付近で大規模な落石事故が発生し、死傷者が40人以上出たこともあるのです。また、山には山のルールがあるが、それを知らない人間が多いのも事故を生む一因なのです。
山では、落石を起こしたら大声で「らくせき!」「らーく!」と叫ぶのが決まりですが、それを知らずに登っている登山客が大半でしょうし、夜なら声が掛かっても目視ができません。第一、富士山は登山客だらけで、自分のペースで歩くのが不可能なぐらい混んでいますから、石が落ちてくるのが見えても避けようがないのが現状だという。また、登山客の中には傘をさして登っている人がいますが、これも危険。山では突然突風が発生することがあり、ビニール傘など一発で壊れるのです。両手を空けておかないと、とっさの事態に対応できないので、本人も危険ですし、壊れた傘が飛べば、周囲の人間はケガをすることになります。
落石の可能性はいくらでもあるのに、発生したら避けようがないとは、恐ろしくてしょうがない。今回の事故では、「私が石を落としたかもしれない」と名乗り出た人物も現れたが、その人物は罪に問われるのでしょうか。
落石事故は、“誰かが1つの石を落とし、その石が誰かに当たる”という単純なものではなく、“小さな石が落ち、より大きな石がグラリと揺れ、それまで均衡を保っていた岩々が一気に崩れ……”といった形で起きるものが大半です。その因果関係は証明できませんし、現場も暗かったので目撃者を探すのも難しいものです。
自然の脅威
どんなスポーツや娯楽にもリスクは付き物ですが、最低限のルールさえ知らない・守らない人間が溢れかえる状況は、まさに恐怖でしかないです。富士山は「一度も登らぬバカ、二度登るバカ」と言われていますが、今の状況では、何回目だろうが“登るヤツはバカ”といった事態になりかねないでしょう。自然の脅威の前に人間はなすすべがないのですから。